別れの朝、目頭押さえ見送り 輪島から中学生集団避難

中学生を乗せて出発するバスに手を振る保護者=17日午前9時3分、輪島市河井町

 能登半島地震で大きな被害を受けた輪島市の市立中学生401人のうち希望する約250人が17日午前、家族の元を離れ、白山市に向けて出発した。学校再開の見通しが立たない中、整った環境で学びの機会を確保するためで、被災地の中学生の集団避難は初めて。生徒は「勉強、頑張るよ」と話し、家族は「体に気を付けてな」と目頭を押さえて送り出した。

 輪島市の中学生1、2年生が白山市の白山ろく少年自然の家、3年生が同市の白山青年の家で集団生活を送る。避難期間は年度末までの2カ月間を見込む。

 氷点下の朝、集合場所の道の駅輪島「ふらっと訪夢」にはキャリーケースなどを持った中学生が次々到着。葬祭施設で避難生活を送っていたえ輪島中3年の新谷昇さん(15)は「地元の高校を目指して受験を控えるので、安心できる環境に行きたい。避難所では会えなかった友達との時間を楽しみながら授業を頑張りたい」と決意を語った。

 一時孤立状態となった鵠巣(こうのす)地区から娘をり出した父親の雄大(たけひろ)さん(47)は「悩んだが、本人の気持ちを尊重した。集団避難が子どもの成長につながってほしい」と話した。

 集団避難を希望しない生徒約150人については個別に対応する。転校を希望する生徒については転校先の教育委員会と連携し、手続きの簡便化を検討する。帰宅を希望する生徒が出た場合は柔軟に対応する。

 町野地区にある東陽中の生徒は、ファミリーマート能登柳田店、門前中の生徒は穴水町此木でバスに乗り込んだ。

 輪島市を出発した中学生は17日午後、白山市の避難先の施設に到着した。

 大規模災害時に子どもが一斉に保護者から離れて避難するのは異例。2000年に伊豆諸島の三宅島(東京都三宅村)の噴火で全島避難となった際には、小中高生約360人が旧都立秋川高(あきる野市)で寮生活をしたことがあった。

 珠洲市と能登町でも同様の集団避難に向けた調整が進められている。

 石川県教委によると、16日時点で公立小・中学校計281校のうち輪島市、七尾市、穴水町の計28校は、学校が避難所として活用されていたり、施設が地震で被害を受けたりして始業時期が決まっていない。公立高も47校中6校で授業を開始する見通しが立っていない。

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