避難所から甲子園へ 輪島で被災の航空石川投手 ボランティアで奮闘 住民から感謝状

飯田会長から感謝状を受け取る福森さん(右)=七尾市矢田郷コミュニティセンター

 「あなたは避難所運営に多大な功績を残しました」。手作りの感謝状が読み上げられると、温かい拍手が響いた。受け取ったのは、七尾市の矢田郷地区コミュニティセンターでボランティアを続けてきた航空石川高野球部2年の福森誠也さん(17)。春のセンバツ出場の可能性がある同校は山梨県で練習するため、福森さんの活動は17日が最後だった。「能登に勇気と元気を届けたい」。住民の希望も背負って夢のマウンドを目指す。

 福森さんは地震発生時、七尾市に住む両親らと輪島市鳳至町にある祖母の早瀬舞子さん(66)宅で被災した。壁の下敷きになった祖母を助け、はだしで高台に避難。家族10人は無事だったが、無残なまちの姿に言葉を失った。家族全員で車1台に寝泊まりし、2日間は即席麺を分け合ってしのいだ。

 3日に七尾の避難所に身を寄せ「何か役に立ちたい」とボランティアに参加した。ゴミ回収、掃除、炊き出しに精を出し、休憩時間にはガラス窓に映る自身の姿を見ながら投球フォームを確認した。そんな高校球児のひたむきさに住民も勇気づけられた。矢田郷地区まちづくり協議会長の飯田伸一さんは「つらい経験をしたのに手伝ってくれて助かった」と感謝する。

 今年のセンバツは北信越に3枠が与えられ、北信越大会優勝の星稜と2位の敦賀気比が当確。残る1枠は3位の航空石川と北陸(福井)のどちらかと見られ、26日の選考会で決まる。

 サプライズで行われた感謝状贈呈式。飯田さんは「能登のみんなで応援している」と背中を押し、がっちりと握手した。福森さんは投手で、主力30人に入っている。避難所から甲子園へ。能登の優しさに見送られ、山梨へ向かった。

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