生産量減、担い手不足の浦村のカキ養殖 業者が会社設立で苦境を乗り切る 三重県鳥羽市

テレビ愛知

三重県鳥羽市浦村町。養殖かきの一大産地ですが成育不良や高齢化による担い手不足などの問題を抱えています。その中で養殖業者が集まり会社を設立。共同で養殖や出荷を行って苦境を乗り越えようとしています。

カキの養殖がピンチに

カキ

寒いこの時期が旬のカキ。東海地方有数のカキの一大生産地の三重県鳥羽市浦村町では、ピンチを迎えています。浦村町にあるカキ養殖業者・浦村シーファームを訪れました。

浦村シーファーム取締役 浅尾大輔さん:
「下がふっくらしています。内容量的にもいいわけですよね。こういったものは身が良かったり、甘味が強かったりします」

15年前に浦村に移り住みカキ養殖業者を始めた

浅尾さん:
「もともと一次産業のあこがれが強くて、その中でも漁業をしたいという思いがありました。15年前に浦村に住んでカキ養殖業者を始めました」

開業当時は順調だったと言いますが、約5年前から状況が変わったとのこと。

浅尾さん:
「カキの収穫量って実は減っています。僕が始めた15年前より漁獲量が半分の年もあります。資材費もかなり高騰していて、原油、この船の油代とかも全てが上がっているので、この先大丈夫かな、と不安にかられました」

生産量の激減に燃料の高騰、担い手不足の減少も

なぜカキの生産量が減っているのか。

浅尾さん:
「口が開いていて、死んでいるカキ。口が開いて中身がない状態です。これが5割なんです。多いときは6割から7割のカキが死んでいます。収穫量的には落ち込んでいます」

温暖化や、海洋汚染。さまざまな原因が考えられますが、はっきりとした原因は分かっていません。生産量の激減に燃料の高騰。加工設備の更新費など、課題は山積みです。さらに高齢化による担い手不足も重くのしかかり、最悪の場合、浦村のカキがなくなってしまう可能性も考えられていました。

カキ養殖業者11軒がタッグを組んで法人化

大幅なコスト削減を実現

浅尾さん:
「浦村にカキ養殖業者が60軒ぐらいいます。その内の11軒が組んで新しく法人化、協業化をしてみんなでカキ養殖をする会社を作りました」

それが浦村シーファームです。会社の設立でさまざまな恩恵がありました。まずは別々に保有していた船、加工場、倉庫、機械、運搬するトラックなどが統合することにより、必要最低限に減らすことが可能に。大幅なコスト削減を実現させました。

浅尾さん:
「今までだと僕でも朝カキあげに行って、カキをむいてたたいて荷物を積めたり、会計をしたり。1人でやる仕事がいくつもありました。(今は)それぞれが分けられていて、無駄な動きもしなくて良いし、責任をもって仕事をすれば、勝手にすべてが回ります。気持ち的にも体力的にも楽です」

調味料なしでも食べられる

さらにコスト削減で生まれたお金でカキを洗浄する機械の導入や、カキ料理を提供する飲食店を開業するなど、個人ではできなかった新たな試みにも挑戦できるように。

浅尾さん:
「とてもおいしい。調味料なしでも食べられるのがおいしいです。そのままでも全然素材の味だけで」

コスト削減はできましたが、最初から順調だったわけではありませんでした。

浅尾さん:
「みんな個人個人が長年1人親方でやってきたので、ぶつかり合いはあります。俺はこうやってたよみたいなことがあります。それはそれで仲間なので。うまいことやるしかないですね」

「ほかの地域の人にも来てほしい」と語る

会社設立から1年半。カキ養殖業者として持ち直した浦村シーファームは次を見据えています。

浅尾さん:
「担い手不足は、どの田舎も一緒です。漁業へのあこがれがある人への受け皿になりたいのと、ほかの地域の人も来てほしいです。この地域から出て行った長男とか跡継ぎにも戻ってきてもらう1つのきっかけになるようなモデルケースにしていきたいです」

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