さい銭で両替、無償OK 隆勝寺(山形)、小売業者向けに開始

さい銭の硬貨を紙幣に両替する東谷智彦住職(右)=山形市・隆勝寺

 山形市の隆勝寺(東谷智彦住職)は17日、主に小売業者を対象として、さい銭で集まった硬貨と同額の紙幣を両替する取り組みを始めた。「手数料なし」がポイントで、硬貨の保管と管理に苦労していた寺側と釣り銭用の硬貨を確保したい小売業者にとっては“ウィンウィン”の関係が成立。東谷住職は「地域のお役に立てればうれしい」と意気込んでいる。

 東谷住職が飲食店関係者との会話の中でヒントを得たのが始めるきっかけとなった。日常的に小売業者は釣り銭用の硬貨を必要としており、「寺では年末年始やお盆などを中心に、年間数千から数万枚の硬貨がさい銭として集まる。地域のために活用できないだろうか」と考え、無償で両替することを思いついた。「浄財は参詣者の思いそのもの。1円残らず有益に使いたい」と語る。

 財務省山形財務事務所は「両替は金融機関の『付随業務』との位置づけで銀行の免許は必要ない」と話す。各金融機関では低金利による収益悪化やキャッスレス決済の浸透で、一定の枚数以上の硬貨に取扱手数料を導入しているのが一般的となっている。

 「ありそうでない仕組みだと思う」。市内の飲食店「KAZU」で働く安孫子和起さん(26)はこう話し、両替のため同寺を訪れた。安孫子さんの店は宴会利用が多く、約8割は現金払い。インバウンド(訪日客)も現金の割合が高く、両替手数料に頭を悩ませてきたという。「大変助かる」と顔をほころばせた。

 同寺では1人千円まで両替を受け付け、電話などで事前に希望する硬貨と金額を伝える。問い合わせは同寺023(622)9480。

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