「僕ができる第一歩」 珠洲で経験、金沢・千坂小の道下君 当日の様子、思いノートにつづる 車で一夜、満天の星が希望に見えた

「地震に遭った自分の気持ちを整理するために書いた。自分の感じたことが少しでも力になればうれしい」と語る道下君=金沢市の千坂小

 元日に珠洲で能登半島地震に遭った千坂小5年の道下煌真(こうま)君(11)は、新学期に学校に提出した自学ノートに、当日の様子や素直な思いをつづった。地震直後の混乱や、車で一夜を明かし、満天の星が希望に見えたこと、普段からの備えの教訓などをまとめ、「無事に帰ってこられた僕ができる第一歩」と締めくくった。

 道下君は元日、父方の親戚が集まる珠洲市蛸島町の家で過ごしていた。母は仕事で金沢に残り、家には父ときょうだい、いとこら約20人が一緒にいた。

  ●「外、外出て来て」大声で避難促す

 冬休み明けに学校に提出した「地しん」の題の文章には、地震直後や車で家に帰るまでをまとめた。スマホの警報音から立つこともできないくらいの強い揺れでテレビも電気も消え、家の中はぐちゃぐちゃに。泣く子もいた。走って家を出た道下君は「外、外。出て来て~」と大声で避難を促した。「普段から声が大きいと言われているから、自分の声なら届くと思った」と振り返る。

 1泊する予定を切り上げ、家族5人で車に乗り、亀裂の入った道路を何とか進み、能登の店舗駐車場で一夜を明かした。この経験から、車にも飲み物や充電器などの備えが必要だと思ったこと、災害ではインターネットが使えず、普段から知識を身に付けておく必要を感じたとする。

 金沢の自宅に戻って、母の顔を見てほっとし、「笑って過ごせるのは当たり前ではない」と家族の大切さも身に染みた。

 「星空」と題した文章も提出し、車で避難中、能登の星空を見た気持ちを書いた。

 「とんでもない量の星が目の前に広がり、恐怖と絶望の気持ちでいっぱいだったので星の光が希望に見えました」「復興したらこの星を見に能登に行きたい。みんなが能登を怖がらず、あそこはいい所だよねとまた話したいです」「能登の人が少しでも早く温かいおふろに入りながら星空も見られますように」

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