社説:企業倒産の急増 中小の三重苦は深刻だ

 大企業と中小企業で二極化する日本経済のいびつさを表しているのではないか。

 2023年の企業倒産は前年比35%増の8690件に上ったことが、東京商工リサーチの集計で明らかになった。

 4年ぶりに8千件を超え、増加率はバブル経済崩壊後の1992年以来の高さという急伸ぶりだ。京都府は314件、滋賀県は102件で、ともに30%強の大幅増である。

 3年余りに及ぶ新型コロナウイルス禍を越えたものの、中小企業を支えた融資制度の返済負担に加え、原材料高や人手不足の三重苦がのしかかっている。

 片や、輸出大企業の好業績から、バブル期以来の高値更新が続く株式市場と対照的である。

 国内企業の大多数を占める中小の経営健全化を後押しし、政府の目指す「経済の好循環」につなげられるかが問われる。

 倒産急増の背景に、国がコロナ禍の中小企業支援策で行った実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の重荷が横たわる。

 融資実績は全国で約245万件、計43兆円に上り、苦境下の事業継続を下支えした。昨春から返済が本格化する中、業績が戻らないまま資金繰りがつかなくなる例が目立つという。

 同融資を受けた企業の倒産は631件と1.4倍に増えた。政府は、月々の返済負担を減らせる期間の長い融資への借り換えを促すなどしている。

 4月にかけ返済のピークを迎えるとみられ、金融機関も融資先の実情に沿って柔軟に対応し、事業再生をきめ細かく支援すべきだ。

 コロナ禍からの回復遅れは、飲食業を含むサービス業で目立ち、建設、運輸とともに倒産増が顕著だ。需要が戻っても深刻な人手不足が影を落としている。

 要員確保に向けた「人件費高騰」による倒産が急増し、「求人難」「従業員の退職」の理由を合わせ158件と倍増した。

 4月からトラック運転手や建設業の従事者らの残業規制が強化される「24年問題」でさらに厳しさは増す。

 物価高に苦しむ製造業などを含め、原材料と人件費の増加分の適正な価格転嫁が極めて重要だ。行政の監視強化とともに、各業界を挙げて取り組みたい。

 ゼロゼロ融資は、事実上の破綻企業を延命させた面も否めない。倒産に伴う失業者のセーフティーネット(安全網)と円滑な労働力移動の支援拡充も不可欠だ。

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