駅の入場券だけで東京駅から広島駅まで新幹線に乗車した、いわゆる「キセル行為」の罪に問われていた男2人の裁判が、19日、広島地裁で始まりました。
起訴状によりますと、さいたま市見沼区に住む飲食店店長の男(28)と東京都西東京市に住む引っ越し作業員の男(40)は共謀して、去年10月28日午後、新幹線の正規運賃の約1万8000円の支払いを免れ、不当な利益を得たとして、電子計算機使用詐欺の罪に問われています。
店長の男が東京駅で購入した入場券で新幹線に乗り、広島駅で待ち受けていた作業員の男から広島駅の入場券を受け取り、改札を出たとみられています。
19日の初公判で2人は起訴内容を認めました。
検察側は冒頭陳述で、「店長の男は知人とコンサートに行く予定だった」「2人はLINEで連絡を取り合い、作業員の男が広島駅で入場記録のある入場券を用意し、1枚5500円の代金と引き換えに手渡した」と指摘しました。
また検察側は、作業員の男が捜査段階で、これまでにキセル行為を「30~40回繰り返していた」と供述していたことを明らかにしました。
被告人質問で作業員の男は事件の動機などについて問われたのに対し、次のように述べました。
「お金目当でした。もともと鉄道好きでどこかに行けることとお金になることでした」 「うまくいくことでストレス発散になっていた」 「善悪の判断を見失ってた」
一方、検察側から、これまでにキセル行為が発覚しそうになったことがあるかという質問に対しては、次のように述べました。
「ありました。3、4前に新大阪駅で」 「結果的に大事にならず、安堵の気持ちが大きくなってしまった」
検察側は作業員の男に対し、「お金欲しさに犯行に及び、常習性があった」と指摘。「責任は重く、厳罰に処するべき」として懲役1年6か月を求刑しました。一方、弁護側は鉄道会社に対し被害弁償を済ませていることや、真摯に反省していることなどを挙げて、執行猶予つきの判決を求めました。
作業員の男に対しては、1月29日に判決が言い渡される予定です。店長の男については、2月8日に母親の証人尋問などが行われる予定です。