「コストコ」よ、来い!新店舗続々オープン、次なる出店地域を占う

「あの工場跡地に来るらしい」
「出店への住民説明会が始まったって」
またか、と思いながらも期待が高まってしまうのが「地元へのコストコ出店のうわさ」ではないでしょうか。生鮮食料品から家電やパソコン、組み立て式の物置までと幅広い品揃えと大ロット・低価格で日本企業のスーパーと一線を画す「COSTCO(コストコ)」。実はその出店が加速しているのです。

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2020年には木更津倉庫店、21年には熊本県、北海道、名古屋市の3店、23年には群馬県と大阪府門真市の2店といったペースでしたが、24年はなんと1年間で4店をオープンさせるとされています。 国内に33店(2023年8月24日現在)を展開するコストコは、30年までに50店体制を目指しているともいわれています。

同社は世界12か国で871店を運営していますが、日本の店舗数はすでに韓国の18店やイギリスの29店を越えて第4位。50店を達成すれば本国アメリカ、カナダに次ぐ第3位となります。アメリカ発の有料会員制メガスーパービジネスはすっかり日本に定着し、成長を続けているのです。

近くになければ作ればいい 再販店が人気に

コストコ人気の高まりと並行して「再販店」のオープンも増えています。コストコから商品を購入し、運搬費、人件費などを上乗せして「再販」するスタイルは、コストコから離れている地域で拡大しています。

品揃えはコストコ本体にはかないませんが、繰り返し使う日用品などを中心に「売れ筋」を揃えることで客を集めています。さらに、会員制のコストコで必要な年会費も再販店では不要です。また、量が多い商品を小分けにして販売する工夫などもあり、利用者は「コストコまでのガソリン代、年会費などを考えると数割高くても手頃」と話しています。

次に出店の可能性が高いトップスリーは…

「コスパの高い大容量商品や数々のオリジナル商品に加え、米国らしいエンターテーメント性を備えた店内が、特に若い世代に根強く支持されているようです」と魅力をこう説明するのは福島県いわき市の一級建築士で、長年都市計画行政に携わってきた、UrbanPoleShift代表取締役、満山 堅太郎さん(38)です。

満山さんは自治体職員だったとき、地元に誘致したい商業施設として、市民からたびたびコストコが挙げられたと話します。 都市計画を手掛ける会社を設立してからは、まちづくりについてのコラムを数多く執筆。その一つ「次はどこ? 『コストコ』の新規出店エリアを予測してみた」では出店最大の要件となる人口に着目して、出店の可能性が高い都市圏を予想し、トップ3に「岡山県南広域」、「新潟市、新発田市等」、「静岡市」を選んでいます。

中でも、満山さんは静岡市を「人口が減少しているものの市街化区域の人口密度が高く、中部地方の平均が約50人/haなのに対して約60人/haと、求心力が高いエリアです」と評価しています。

コストコはどの様に出店先を決めているのでしょうか。同社がHPで発表している出店エリアの出店条件は次の通りです。

1. 高所得層マーケット
2. 半径10キロメートルの人口が50万人以上
3. 企業が多い地域
4. 敷地面積 1万坪以上(ガスステーション用敷地を含む)
5. 建築面積 約4500坪以上
6. 用途地域=準工、商業、近隣商業(売り場面積1万平米超)
7. 駐車場収容台数、800台以上
8. 車のアクセスの良い物件
9. 購入・定期借地(40年以上)・建貸

求心力高く有望、静岡市への可能性を分析

「人口50万人以上を有するエリアであれば、すでに競合する総合スーパーが数多く立地しています。日本上陸当初、経済アナリストからは『販売商品群が重なり、他の外資スーパー同様、コストコも苦戦する』といった前評判がありましたが、点数を絞った大容量商品、会員制による囲い込み、アメリカらしい非日常感あふれる店内などの差別化策によって顧客獲得に成功しています」と同社の戦略を分析する満山さん。

さらにこれまでの店舗の立地をみてもショッピングモールが好んで進出する中心市街地から離れ、高速道のインターチェンジ近くなど交通の要所を選ぶなど、適切に商圏人口や将来的な交通環境の整備を捉え、行政の都市計画に応えるように出店している、と解説します。

それでは“求心力の高い単独自治体”として静岡市は、次の出店エリアに選ばれる可能性はあるのでしょうか。前出の出店条件の中には「敷地面積1万坪以上(ガスステーション用敷地を含む)」があります。つまり、サッカーコート約4面分の土地の確保ができなければどれだけ経済環境が整っていても施設は建たないのです。

満山さんは「過去の事例をみると、工場等の跡地や建築規制が緩い地域、いわゆる『白地地域』や市街化調整区域に立地するケースが多いようです。こうした地域に大型施設が出店するには行政との協力、支援が必須」と企業単独での出店は難しいと話します。特に静岡市は平地が少なく人口密度が高いので「まとまった土地」が出にくい地域。行政が積極的に土地確保に動く必要がありそうです。

大胆推理!出店のカギ握るのは静岡市長と「清水港」の関係?

コンパクトシティを標榜する静岡市は大型店の立地は「静岡駅」「東静岡駅」「清水駅」周辺に、としてます。しかし満山さんは「出店には清水港エリアが大きなカギになる」と推論しています。現在、コストコの物流拠点は千葉県市川・市原と兵庫県の三木市にあり、海外からの商品はコンテナ輸送されてくるそうです。

「今後、中部圏への出店展開を見据えると、コストコはコンテナ貨物を扱える国際港を備え、中部横断自動車道が開通している清水港エリアを新たな物流拠点として検討している可能性があると思います」と語り「何を隠そう難波静岡市長は、港の管理、利活用が仕事の国交省港湾局出身。地域経済の活性化を狙って、清水港を担当する中部地方整備局と協力し用地確保に動くことも考えられます」と大胆推理を披露してくれました。

大型商業施設の誘致は、地域経済に与えるインパクトが強く、長期間にわたります。満山さんは「起死回生策として大規模商業施設の立地を支援しその結果、都市全体の構造にさまざまな影響を及ぼしてしまったケースが散見されます」と誘致に先立って、行政の将来への正確な見通しが欠かせないと強調しました。

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