竜の名所、宇都宮の街なかは? 宇都宮二荒山神社、伝馬町屋台や火焔太鼓山車(新石町)も必見 辰年ちなみ記者が訪ねた

赤い鳥居が印象的な初辰稲荷神社

 ことしは辰(たつ)年。日光東照宮境内の本地堂(薬師堂)にある「鳴竜(なきりゅう)」や、那須烏山市の龍門の滝など県内には有名な竜の名所がありますが、さて、街なかは…。宇都宮二荒山神社を訪ねてみました。

 元旦から大勢の初詣客が訪れた宇都宮二荒山神社。辰にちなんだものを探していることを伝えると、金子宗人(かねこむねひと)権禰宜ごん(ねぎ)(49)が案内してくれた。

 まずは本殿の西側にある朱色の鳥居が連なる「初辰(はったつ)稲荷神社」。名前に「辰」の文字が使われている。江戸時代には、ほぼ同じ場所に稲荷神社があったという記録があるが、詳しいことは分からないという。

 大祭は旧暦の2月の「初午(はつうま)の日」(ことしは3月19日)、月次祭は月初めの「午の日」に行われる。「初辰」と聞くと、月初めの「辰の日」にお参りをする大阪市の住吉大社の「初辰まいり」を思い出すが、初辰稲荷神社はあくまでも“お稲荷さん”だ。

名水、書道上達の信仰も

 鳥居は数えると24基あった。くぐっていくと、自然と厳かな気持ちになる。社殿には奉納された幾つものちょうちんが下がり、これも趣がある。五穀豊穣(ごこくほうじょう)、商売繁盛の神様。神様のお使いの石像のキツネたちに見守られながら、お参りした。

 続いて隣の「明神(みょうじん)の井」へ。蛇口をひねると、竜の口から水が流れ出た。江戸時代に宇都宮の「七水」に数えられた名水の一つ。この水を使うと書道が上達するという言い伝えもある。竜は水や風をつかさどる。手水舎にも竜があしらわれていた。

 最後に境内の東にある神楽殿に向かった。明治期の建造で県の有形文化財に指定され、1、5、9月の各28日の太々神楽(市指定無形文化財)の奉納で知られる。やや分かりにくいが、見上げると破風の下に竜の彫刻が施されていた。「そもそも彫刻が少ない神社なんです」と金子さん。貴重な竜に出合えたようでありがたい気持ちになった。

城址公園内に保存展示

 宇都宮二荒山神社にゆかりの竜は、神社の外にもいる。同神社の菊水祭で引き回された山車屋台だ。中でも1852年の建造とされる「伝馬町屋台(黒漆塗造彩色彫刻屋台)」(県指定有形文化財)は豪華絢爛(けんらん)な屋台の前後にそれぞれ金色に輝く3頭の竜が絡み合い、見事だ。屋根の上にも2頭いる。伝馬町屋台保存会の早乙女勉(そうとめつとむ)さん(73)によると、魔よけや防火など、それぞれ意味があるという。

 「宮のにぎわい山車復活プロジェクト」が復元した旧新石(しんこく)町(現伝馬町、小幡1丁目の一部)の「火焔(かえん)太鼓山車」も、太鼓の下に配置された2頭の竜が目を引く。

 2基ともことしの予定は未定だという。ぜひ、その雄姿を祭りで見たい。ただ、火焔太鼓山車は宇都宮城址(じょうし)公園のまちあるき情報館(開館午前10時~午後7時)で保管展示されており、一部解体した状態になるが、見ることができる。

竜の口から水が出る「明神の井」
絡み合う竜の彫刻が見る者を圧倒する伝馬町屋台
新石町火焔太鼓山車(宮のにぎわい山車復活プロジェクト提供)

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