LRT沿線に新名所を 宇都宮・平石地区住民が親水活動 古くからの自然景観残す

山下川の親水活動に取り組む三石猛さん。背後にLRTの車両が見える

 次世代型路面電車(LRT)沿線の新名所をつくろうと、栃木県宇都宮市平石地区の住民が身近な河川の親水活動に取り組んでいる。昔ながらの小川の風景が残る山下川を舞台にした活動で、地元親水会の代表三石猛(みついしつとむ)さん(78)=陽東8丁目=は「古くからの自然景観を残し、手入れをしていきたい。LRTに乗って遊びに来てほしい」と呼びかける。

 平石停留場の西方約300メートル。住宅街の台地と田園地帯の境を南北に、山下川は流れている。「古くは農業用水として使われていたようです。この辺りはコンクリートで固められず、昔の面影を残しています」と三石さん。北側にLRTの高架橋が見え、黄色い車両が行き来している。

 川にはメダカ、ウグイ、ドジョウ、川エビ、ザリガニなどが生息し、カワセミも飛来する。台地との境の斜面には広葉樹が連なり、春や秋にはヤマザクラの花や紅葉で彩られるという。

 三石さんにとって、山下川は幼少期の記憶を思い出させてくれた川。新型コロナウイルス禍に帰省が困難になると、古里の長野県で暮らす母とはビデオ通話で交流した。身近な自然に目を向け、川辺で草花を摘んで画面越しに見せた。「原体験を思い出す、そんな懐かしい風景がここにはあると思うんです」と話す。

 LRT開業で沿線開発が見込まれる中、古くからの自然景観を残しつつ沿線の新名所にしたいと2020年、川に親しむ活動を「山下川下平出上野親水会」の名で開始。住民らメンバー7人で水辺の草刈りや樹木の間伐といった手入れ、地域の子どもらを招いての川遊びや炭作りといった交流の場を提供している。三石さんが宇都宮大工学部の教員だった縁から、同大で河川環境をテーマにしたアカデミックな勉強会も開いてきた。

 今後、平石停留場前には東部総合公園が整備され、今以上に人の往来が増えそう。停留場発着で川沿いを歩くウオーキングコースを考案したいといい「LRTに乗り、東西の住民が交流できる水辺空間を提供できれば」と目標を語る。

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