住民30人の島に一つだけ 長崎・松浦の「下條商店」 人が減っても絶えない笑い

山口さん(左)の笑い声につられる下條さん(右)と田中さん=下條商店

 長崎県松浦市の本土部と福島、鷹島の中間に浮かぶ飛島で、住民約30人の暮らしを支える「下條商店」。野菜や果物、飲料、調味料が店内に並び、女性たちの笑い声がいつも絶えない。
 飛島はかつて炭鉱で栄え、ピーク時は2千人余りが住んでいた。店主の下條敦子さん(83)は島がにぎわっていた頃から店を切り盛りする。当時はスーパーや理髪店、銭湯のほか、映画の上映会もあったが、1969年の閉山を境に次々と姿を消し、いつしかこの店だけになった。
 午前6時開店。同8時半、いったん店を閉め、高速船で本土の今福港へ。港近くで商品を仕入れ、1時間ほどで飛島に戻る。午後7時の閉店後、2階の住居で体を休めるが、1階の押しボタン式のチャイムが鳴ると店に下りていく。年中休むことなく、客を迎える日々だ。
 今月16日の昼過ぎ。近くに住む田中満子さん(84)と山口リエさん(92)、下條さんが店内でたたずんでいた。3人とも漁師の経験があり、田中さんは現在もエビ網漁を続けている。
 「あんた、ズボンの後ろと前ば逆に着とらんね?」。山口さんを見て、田中さんがこう尋ねると「これがハイカラの着方たい」と山口さん。下條さんは「飛島の人間はよくしゃべるけん、元気かとよ」。会話は途切れることなく、笑い声がいつまでも響いていた。

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