「やるべきことやった」女性の病状は把握せず ALS嘱託殺人公判・被告医師

京都地裁

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判の第6回公判が23日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。被告人質問で大久保被告は、犯行直前の状況について、女性の意思を確認したとする一方で、病状を詳しく把握することはなかったと明かした。

 弁護側の質問で、大久保被告は、殺害直前に女性と文字盤でやりとりし、意思を確認したと説明。女性が「死なせて」などと伝えてきたとし、薬物注入後は呼吸が止まる様子を見届け、「やるべきことはやったと思った」と振り返った。

 検察側から、女性の病状を主治医やヘルパーに確認しなかったことをただされると、「ご指摘が当たる部分はある」と認めた。また、犯行直前に女性の呼吸状態を確かめたところ、安定していたとも述べた。

 一方、大久保被告は、医療に見せかけて高齢者や障害者を殺害する方法を記した「マニュアル」を執筆した意図について「病気などで死にたくなるほど追い詰められた人の心の支えになると思った」と述べた。

 マニュアルに「誤(ご)嚥(えん)性(せい)肺炎のつくり方」「転倒させて骨折させる」「薬を使わない死なせ方」などを記載した点については、「(追い詰められた患者は)具体的な方法を示されることで立ち止まって考える。人をたくさん死なせる意図はない」と説明した。

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