「とにかく行動を起こすのです。世界中の人とつながって」 核兵器禁止条約 発効から3年 ICAN メリッサ・パーク事務局長が広島で語ったこと

発効して3年となる核兵器禁止条約。この条約成立の立役者とも言えるのが国際NGO「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」です。18日には、メリッサ・パーク事務局長が来日し、広島など各地で核兵器廃絶に向けて活動する人たちと意見を交わしました。

メリッサ・パーク事務局長が広島に到着したのは、19日。初めての広島訪問でした。

2007年に発足した「ICAN」は、核兵器を禁止、廃絶するために活動する世界各地のNGO、およそ500団体の連合体です。2011年から、核兵器の非人道性を訴える各国政府と協力して、国際法で禁止するキャンペーンを展開してきました。

そして2017年、国連で核兵器禁止条約が成立。「ICAN」はこの年のノーベル平和賞を受賞しました。

パーク事務局長は今回の来日後、すぐ超党派の国会議員7人との討論会に出席しました。日本政府は条約と距離を置いていますが、パーク事務局長は、核被害者の支援というテーマをきっかけにすれば、日本も次の締約国会議に参画できるのではないかと提案していました。

パーク事務局長は、とても気さくな人柄で、周囲の人から「メリッサ」とファーストネームで呼ばれています。

メリッサさんはオーストラリア出身で、コソボやガザなどで国連に勤務した後、オーストラリア連邦議会議員になり、核軍縮などに取り組んできました。9年間の議員時代に、国際開発大臣も経験しています。

去年9月にICAN事務局長に就任。以来、ずっと希望してきた広島訪問でした。

ICAN メリッサ・パーク事務局長
「お会いできて嬉しいです」
被爆者 笠岡貞江さん
「涙が出そうな」

被爆者との面会にもたっぷり時間を取りました。体験を伝えたのは、中学1年の時に被爆した笠岡貞江さんです。

笠岡さんは、原爆で両親を亡くし、きょうだいで懸命に生きてきた経験から、核兵器の廃絶を強く望むと訴えました。

被爆者 笠岡貞江さん
「せっかく広島に来られたからには、いう思いで、被爆者の思いも聞いてくださったんかな、ありがたいな、と思いますね」

「Join the treaty!(条約に参加を!)」
被爆者団体などが集うキャンドルイベントでは、風に消されてしまう600個のろうそくに、メリッサさんは「核兵器の数より少ないから平気よ」と、笑いながら次々と火を点けていきました。

スピーチは、みんなの心に灯りを灯すように温かい言葉で紡ぎました。

ICAN メリッサ・パーク事務局長
「被爆者は、世界に向けて勇気をもって、その体験を何度も何度も話してくれています。彼らなしに、核兵器禁止条約は成立しませんでした。これは人類への愛、私たちが暮らす美しい地球への、愛の条約なのです」

この日の最後のイベントは、「世界を動かすNGOのリーダーからネホリハホリ聞く」という目的で開催された市民集会。

話題は、ICANが、オーストラリアの台所での井戸端会議から始まったことや、ノルウェーの政権交代により補助金がストップした話、SNSの使い方や、既存メディアに注目されるコツにまで及びました。

ICAN メリッサ・パーク事務局長
「ニュースについては…あなたたちはいつも何か新しいものを求めているでしょ?だから私は、自分たちの伝えたいことを、メディアが興味を持つように、いかに新しい切り口で提示するかを考えるようにしています」
「前向きな変化は、1晩で起きるようなものではありません。それは少しずつ積み上げていくもの。そのためにやらなきゃいけないんです」

そして、広島を拠点に核兵器廃絶に向けて活動を続ける若者から、切実な問いかけ
も。
カクワカ広島 高橋悠太共同代表
「一番聞きたかったのは、私達市民社会の問題意識を、どうやって国際会議の議論の場にあげるか。より大きな意思決定の場に持っていけるのか、っていうのが聞きたい」
ICAN メリッサ・パーク事務局長
「とにかく行動を起こすんです。他の人と一緒に動けば、より力強いものになります。違う場所にいる、良く似た立場の人を見つけるようにして下さい。今や私たちは、テクノロジーを使って世界各地の人とつながり、一緒にやっていくことができるのですから」

メリッサさんは、最後に会場に集まった人たちにこう呼びかけました。
ICAN メリッサ・パーク事務局長
「是非一緒にやっていきましょう、直観に従って、お互いに手を取って。それが世界を変えるのです」

メリッサさんが、全ての場所で伝えたのは、核兵器廃絶への強い決意です。
彼女はそれを資料館の芳名録にも残しました。
「Let.s get rid of nuclear weapons before they get rid of us.」
(核兵器が私たちを滅ぼす前に、私たちが核兵器をなくしましょう)

そして、もう一つ繰り返し口にしたのは、日本政府へのメッセージです。
「日本は唯一の戦争被爆国。つまり核兵器廃絶の問題について、世界の中でリーダーシップを取るべき、唯一の立場にあるのだ」ということでした。

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