京アニ事件犠牲者の夫、青葉被告との面会を望んだ思いは 「死刑判決、まだ通過点」

青葉被告の死刑判決を受け、思いを語る寺脇(池田)晶子さんの夫=25日、京都市上京区

 極刑という司法判断を法廷で聞いた瞬間、目から涙があふれた。京都アニメーション放火殺人事件で犠牲になった寺脇(池田)晶子(しょうこ)さん=当時(44)=の夫(51)は閉廷後、「晶子が望むであろう判決で安堵(あんど)した。でも、これで終わりなのかな」と複雑な心境を明かした。

 妻に凶行の真相を報告するため、昨年12月までに計22回の審理が行われた法廷に12度通った。被告人質問や意見陳述に臨み、妻や見知った社員が死に至った残酷な現実を突きつけられ、過呼吸にもなった。「苦しかったけど、事実を知ることは救いになった」と振り返る。

 でも、心は晴れなかった。理由の一つは青葉真司被告(45)に抱いた疑問が解決できていないことだ。

 約3カ月間の長期審理の中で、被告はひとごとのような口ぶりで凶行を振り返り、答えと質問がかみ合わない場面が目立った。夫は怒りを封印するつもりだったが、「反省していない」と語気を強め、いら立ちを隠せないこともあった。

 一方、被告は不利になる内容も隠さず証言し、計10日間に及んだ被告人質問で、言葉を重ねた。事件への心情を問われ、「申し訳ない」と遺族や被害者に謝罪もした。「もしかして、彼なりに罪と向き合っているのだろうか」。被告の本心をつかめないまま、審理は幕を閉じた。

 夫は家族の日常を奪った相手を理解することを望んできた。絶対に許さないという処罰感情は変わらないが「晶子に報告するため、グレーな部分は取り除きたかった」。自身や小学6年の息子が事件にとらわれず、前に歩めるよう、どうしても納得したかった。

 法廷での言葉は本音だったのか、最大の動機は何だったのか。判決を3日後に控えた22日、青葉被告が勾留されている大阪拘置所(大阪市)に足を運んだ。しかし、被告は面会を拒んだ。「遠慮させてほしい」と職員に伝えたという。最後まで求めていた答えにはたどり着けなかった。

 夫は一審を区切りに、事件を追うことをやめ、これからは静かに妻を供養していきたいという。「死刑判決だけで、晶子の無念は晴れない。きっと、通過点だろうな」。遠い道のりに思いをはせた。

青葉被告に会うため、大阪拘置所を訪れた寺脇(池田)晶子さんの夫。「彼の本心が聞きたかった」が面会を拒まれた(大阪市都島区)

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