「“物流の大動脈”を止めることを躊躇した…」 そのときドカ雪が 去年の“28時間立ち往生”の反省はなぜ生かされなかったのか

雪の中の高速道路の立ち往生…なぜ起きた

(夏目みな美キャスター)
「25日にかけての、この冬いちばんの寒波による大雪の中で起こった名神の立ち往生。25日の朝、午前4時に解消されたということなんですけれども、改めて何が起きたのか確認します」

(柳沢彩美キャスター)
「はい。岐阜県の関ヶ原インター付近では、24日の午前9時半から一部区間で通行止めが始まりました。この辺りで、最大で約770台が立ち往生しました。

25日午前4時までに車の移動は全て完了したということなんですが、ただ、関ヶ原インターの東、岐阜羽島インターから、関ヶ原を越え、ずっと西の滋賀県の栗東湖南インターまでの通行止めは、34時間も続きました。

東海地方では、実は1年前にも、新名神で大規模な立ち往生があったんです。去年の1月24日から26日でした。この新名神が通行止めになる前から、渋滞、立ち往生が起こっていたんです。三重県の四日市JCTから亀山西JCTまでの間で、最大で66キロの渋滞がありました。

去年の“反省”はなぜ生かされなかったのか

この去年1月の大渋滞は、なんと28時間後に解消されたんですけれども、主な原因についてNEXCO中日本などはこのように話しています。

「車の滞留は一時的なものとして、通行止めの実施をためらった。ただ、除雪作業に想定以上の時間がかかり、結果、最大で66キロの大渋滞となってしまった」ということです。

今後の対応策としては「もう躊躇なく通行止めを実施する」などとしていたんです。

(夏目キャスター)
同じことが起こらないように対応策があったにも関わらず、今回も立ち往生が発生してしまったんですね。大石さん。反省点は生かされたんでしょうか」

「予防的通行止め」を取りやめていた

(大石邦彦アンカーマン)
はい。これ取材してみると、反省点は生かされていたはずだったんですけれども、その判断の行く手を“想定外の大雪”が阻んでしまった、そんなことが言えるのではないでしょうか。「渋滞学」の専門家、東京大学先端科学技術研究センター 西成活裕教授に聞きました。

通行止めの判断って通常どうするのか?ということなんですけれども、NEXCO中日本、国交省、そして今回は岐阜県ですね、都道府県や警察、この4者で決めるということなんです。

今回もWEB会議で、顔の見える関係で情報共有はしていました。今回、状況を見て判断して通行止めを決める、これが通常のパターンなんですね。今回どのように判断したかというと「予防的通行止め」を実は事前にする予定だったんですね。ところが状況を見て「いや、そこまで雪はないんじゃないのか」ということで、この「予防的通行止め」を取りやめたそうなんです。

そうしたら突然、“想定外の大雪”が降ってきたということなんですよね。

(夏目キャスター)
今回は、岐阜県内で立ち往生が発生した。去年は三重県のエリアだったということで、NEXCO中日本が協議するこの相手の自治体が、違ったっていうのも、何かひとつ原因になっていたりするのではないでしょうか。

(大石アンカーマン)
「そうですね、西成教授は『地域によって判断が異なる場合も有り得るのではないか』という言い方もしていました。今回、先ほどお伝えした通り、4者による協議ということだったんですけれども、やっぱりそれぞれが、何らかの判断基準を持っていて、その意思統一をするのが難しいのではないかということを言っていました。

(夏目キャスター)
最近新幹線などは、比較的早い段階で「計画運休」などを発表するようになりましたよね。

(大石アンカーマン)
そうですね。あれは「人流」を止めるということなんですけれども、今回止めるのは「物流」なんです。そこがポイントだと東京大学の西成教授は言っています。

必要なのは「科学的な“数字”の判断基準」

(大石アンカーマン)
高速道路は“物流の大動脈”なんだ「物流を止めたくない」という意識が働いているのではないかということなんですね。やはり物流を止めてしまいますと、社会へ与える影響が非常に大きくなってしまうので、根底に「物流を止めたくない」という思いがあって、今回、予防的通行止めを考えていたのに、取りやめてしまったのではないか、ここにつながってくるのではないかと。

ただ、今回立ち往生が発生してしまって、結果的に物流へのダメージも大きくなりました。今回のことを繰り返さないためには、どうすればいいのかということなんですが、西成教授はこう言っています。

「とにかく明確な、科学的な数字を判断基準として設けるべきではないか」ということです。

やはり人の判断というのは、ヒューマンエラーが出るんだと。だから「数字」を決めて、それに従って判断していく、これが大事ではないかと言っていました。

それと「様々な“最悪のパターン”を想定することが、とっても大事」だとも言っていました。

(夏目キャスター)
はい。一方、通行するドライバーの側も、冬用のタイヤなどの装備というのは大前提とした上で、万が一の立ち往生に備えて、車内に携帯トイレとか水とか食料、こういったものを備蓄していくことが大切かもしれません。

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