「3日分は備えを」断水下のトイレ環境深刻 能登で避難所運営支援・小山内さん(青森市)

断水が続く避難所では水洗トイレが使えず、袋を設置して簡易トイレに。使い方や清掃方法の勉強会も行われたという(小山内さん提供)

 防災教育や女性防災リーダー育成などに取り組む一般社団法人男女共同参画地域みらいねっと代表理事で、防災士の小山内世喜子さん(65)=青森市=が14~17日、能登半島地震で被災した石川県穴水町に入り、避難所の運営支援に当たった。長期化する避難生活の場で「命に直結する問題」と感じたのは、断水下のトイレ環境だという。25日の東奥日報の取材に「食料品や水だけでなく、トイレの備えは絶対に必要」と語った。

 小山内さんはNPO法人レスキューストックヤード(名古屋市)などと活動。指定避難所2カ所で炊き出しや物資の仕分け、生活環境の改善などを支援した。

 現地では、使用できない水洗トイレの便座に袋を設置し、その中に用を足す「簡易トイレ」としていた。排せつ後は凝固剤と目隠し用の新聞紙を入れ、何人か続けて使用する仕組みだったという。

 「トイレが汚れていると感染症のリスクが高まるし、使いたくないからと水分を控えてエコノミークラス症候群になるかもしれない」と小山内さん。これまでも防災教室で簡易トイレを紹介してきたが、実際の使い方や清掃方法を伝える必要があると感じた-と話す。仮設トイレは屋外で寒い、暗くて怖いので使いづらいとの声もあり「各家庭で最低3日分は簡易トイレの備えを」と呼びかける。

 また、段ボールベッドの必要性が伝わっていないことも課題に挙げる。雑魚寝状態の避難者に移動を促しても「今まで通りでいい」と固辞。床付近に多いほこりやウイルスを避けることができ、体も起こしやすいといった意義を伝えることで理解を得られたという。

 物資は山積みなのに数量などの管理に手が回らず、必要な避難者に渡らないこともあった。常駐する町職員の疲弊も目立った。その上で小山内さんは「まず自治体職員が避難所運営を理解しておくことが大事」と強調する。「発災直後は外部支援もなく、どうしても行政職員を中心に回さざるを得ない。防災担当以外も知識を身に付け、いざという時に備える必要がある」

© 株式会社東奥日報社