自然の熱が育てる伝統のしゃきしゃき食感 「大鰐温泉もやし」(青森県大鰐町)収穫盛ん

収穫したての大鰐温泉もやしを稲わらで束ねる博さん
大鰐温泉もやしを水で洗って土を落とするみさん
稲わらを敷き詰めた下には大鰐温泉もやしが育つ沢がある。夏場は骨組みだけを残して小屋を解体し土を「育てる」

 雪が少ないとはいえ、厳しい寒さが続いた1月中旬。まだ辺りが暗い午前4時、青森県大鰐町大鰐の澤田博さん(75)、るみさん(72)夫妻が小屋の中で、町の伝統野菜「大鰐温泉もやし」の収穫に精を出していた。

 温泉もやしは、その名の通り温泉の熱を使って育てる。小屋の中の地面に膝丈ほどの深さに土を掘り「沢」と呼ばれる溝を作る。その沢へ沿うように温泉が流れるパイプが通っている。もやしは沢の中で温泉の熱をもらいながら大きく成長する。

 背丈が長く、しゃきしゃきとした歯応えが特徴で、全国にファンがいる。

 ハウス栽培が主流となっている中、澤田さんはより手間がかかる昔ながらの木造の「もやし小屋」で育てている。小屋の中の空気はひんやりとしているが、稲わらで覆った沢は23度ほどの温かさになるという。

 ハウス栽培との大きな違いは土作り。収穫を終えるたびに沢の土を入れ替えるのは同じだが、11月中旬から翌年5月上旬の収穫期が終わると、柱と梁(はり)だけを残して小屋を解体する。土を日光や雨にさらすのだ。「手間はかかるし、なぜ解体が必要かは分からないが、良いものが育つ」と博さん。「ずっと続けてきたし、信じている」と笑った。

 代々、温泉もやしを作ってきた。「何代続いているか分からないほど。これからも昔ながらの伝統を守っていきたい」

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