離れても気になる千枚田 「お前も来とったんか」

互いの近況を話す白尾さん(左)、日裏さん(左から2人目)=26日、輪島市の道の駅「千枚田ポケットパーク」

  ●金沢から一時帰宅の住民、道の駅で井戸端会議

 元日に国名勝「白米(しろよね)千枚田」を訪れていた約70人が車中泊を続けていた輪島市の道の駅「千枚田ポケットパーク」は地震発生から1カ月近く経ち、どうなっているのだろう。「おお、お前も来とったんか」。道の駅は、金沢に避難し、様子を見に来た住民や地元に残る人が集う井戸端会議の場になっていた。(政治部・向島徹)

 道路のあちこちが波打つ国道249号を車で進み、道の駅に着くと、車数台が止まっていた。白米区長の白尾友一さん(60)がストーブに当たりながら「観光客が置いていった車や。だいぶ減ったけど。ここに来れば、なじみの顔もおるしね」と話した。

  ●区長が炊き出し

 2年前に防災士の資格を取った白尾さんは地震後、「誰かがやらんといかんかった」と、避難所と化していた道の駅で炊き出しをしばらくしていた。

 白米のほとんどの住民は2週間ほど前、金沢に避難した。白尾さんは24日、避難所の金沢市卯辰山公園健康交流センター千寿閣から妻と2人で白米に帰った。「家が余震で倒れとらんか。泥棒に入られとらんか心配で。なんも変わっとらんわ」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 もう一つの気がかりは千枚田。耕作ボランティア「白米千枚田愛耕会」会員でもある白尾さんは「できるだけ早く田作りがしたいが、どうなるか分からん」と無数のひび割れが入った田んぼを見つめた。

 26日、金沢から自宅の整理に戻った前白米区長の日裏利久さん(70)も道の駅に姿を見せた。白山市にいる息子夫婦からは「いつでも来てくれ」と言われているが、「地元に残りたい。でも道なんかめちゃめちゃや。ほんとに復興できるんか」と話す。仮設住宅に入れても、いつまでいられるのか分からず、自宅を再建できるかも不安だという。

  ●「命かけて住んどる」

 発達障害の息子や飼い猫をおもんぱかって、白米町に住み続ける男性(60)も道の駅に。「次、大きな地震が来たら家は間違いなくつぶれるやろ。命をかけて住んどる」と語った。

 離れた人も残った人も「あぜのきらめき」のふるさとで元通りの暮らしを望む気持ちは同じだった。

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