輪島塗の地球儀、無傷 職人37人、制作5年 「産地復興の象徴に」

震災に耐え無事が確認された輪島塗の地球儀=24日、石川県輪島漆芸美術館

  ●県漆芸美術館に設置

 輪島市の石川県輪島漆芸美術館に設置されている輪島塗の地球儀が、震度7の揺れに耐え、無傷で残っていたことが分かった。輪島塗を国内外にアピールしようと、地元の漆芸作家と職人総勢37人が5年がかりで仕上げた産地を代表する大作。1日の激しい揺れで上下がひっくり返ったものの、損傷は確認されず、関係者は「産地復興に向けた勇気とシンボルになる」と喜んでいる。

 地球儀は、国内の漆器産地で唯一、国の重要無形文化財となっている輪島塗の技を象徴する作品を残そうと、輪島塗技術保存会が2017年に制作を始めた。テーマは「夜景」で、黒漆に蒔絵(まきえ)や沈金を施して世界各都市の明かりを表現した。制作費は5千万円。

 直径1メートルの地球儀は完成後、県輪島漆芸美術館に置かれた。1日の地震後に職員が確認したところ、天井の建材の粉が降りかかり、天地が逆さまになっていたが、傷はなかったという。

 輪島市漆器商工課によると、国内の漆器産地の中で、木地(椀木地、曲物、指物、朴木地)、塗り、加飾(呂色、蒔絵、沈金)まで全ての職人がそろうのは輪島だけで、「これほど大がかりで美しい作品は他ではできない」と担当者。後継者の育成が課題となる中、技術の見本としての役割も担う。

 産地にとっては特別な存在で、地震後、地球儀の状態を心配して問い合わせてくる職人もいたという。

 輪島塗技術保存会長で髹漆(きゅうしつ)人間国宝の小森邦衞氏は「地球儀は最高の技術者集団による集大成だ。無事だったのは後継者を育てていく上でも意義深い」と強調した。

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