手作りサンドイッチで人気の「今勢屋」閉店へ 竹田市民に愛され「感謝」【大分県】

「Yショップ今勢屋」の閉店を決めた店主の衛藤五十鈴さん。店内には高校生が書いた寄せ書きがずらりと並ぶ=竹田市竹田町
今月末で閉店する「Yショップ今勢屋」

 【竹田】竹田市民に愛される手作りサンドイッチを販売してきた市内竹田町のコンビニエンスストア「Yショップ今勢(いませ)屋」が今月末で店を閉じ、商店として130年以上の歴史に幕を下ろす。閉店を惜しむ客が連日、詰めかけ、店主の衛藤五十鈴さん(76)は「おいしいサンドイッチを作れる元気なうちに決断したかった。続けてこられたのはお客さまと従業員、家族のおかげ」と話している。

 今勢屋は1890年、せんべい店として市内会々で創業。その後、パン店になった。城下町中心部の現在地に移転後は電気店を経て果物、菓子などを扱う店へと変わっていった。

 衛藤さんは25歳の時、3代目の信也(のぶや)さん(故人)と結婚。作るのが好きだったサンドイッチを1983年に商品化した。卵、ツナ、ハムの3種類から始まり、今では従業員と共に23種類の商品を作る。衛藤さんは午前5時から卵やジャガイモをゆで、特にこだわりの強い卵サンドに対しては塩の量をグラム単位で調整する。

 店は地元の高校生にも愛され、店内には部活生らの寄せ書きが並ぶ。

 同市直入町長湯の団体職員馬場啓四郎さん(54)は竹田高在学時の3年間、野球部の練習後に毎日のように通った。衛藤さん夫婦とはその後も交流が続き、「夫婦はお父さん、お母さんのようで感謝しかない。サンドイッチはおふくろの味、青春の味」という。

 2018年に信也さんが交通事故で急逝。自身の体力への不安と後継者がいなかったため、衛藤さんは2、3年前から県の事業承継制度で店を続けてくれる相手を探したが不調に終わった。

 衛藤さんは「私を支えてくれた従業員は自慢の存在。来店した人と話をして、とても楽しい日々だった。皆さんに感謝しています」と話した。

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