社説:研究支援の人材 安定雇用で活躍を広げたい

 世界の中で日本の「研究力」の低下が指摘される中、大学の研究者を支える専門職の存在感が増している。

 「URA(リサーチ・アドミニストレーター)」と呼ばれ、教員でも事務職員でもない「第3の職種」とされる。研究分析や広報、知財管理などの高い専門性を生かして業務に当たる。

 政府が進める大学研究の「選択と集中」の影響もあり、研究資金の獲得に向けた立案や書類作成の負担が増している。

 これでは本来の研究に打ち込めない。研究者のパートナーとして幅広い視点からの助言も期待されるURAの活用をはじめ、研究環境の充実に向けた多面的な取り組みが求められよう。

 URAは海外の大学で先行して組織化されている。日本では、2011年度に文部科学省が大学への補助事業として本格導入した。同年度に全国で300人程度だったが、現在では1500人超にまで増えている。

 担当業務は、大学ごとに異なるが、研究費の獲得支援だけでなく、大学の新たな研究戦略の立案や特許申請、学内の論文投稿状況調査、国内外の科学政策分析など多岐にわたる。

 研究成果の発信や産学・地域連携の推進にも携わっており、「社会に開かれた大学づくり」に向けても役割は重要になっている。さらに活躍の場を、学生・大学院生のキャリア形成や起業支援まで広げる動きもある。

 効果も表れているようだ。URAを採用した各大学は、外部資金の獲得額や受託研究が増え、研究成果に関する広報活動が活性化した、などと肯定的な見方を示す。

 高度化、多様化する大学の活動を下支えするURAだが、その多くが不安定な立場にあることは見過ごせない。文科省が17年度に実施した委託調査によると、約7割が5年以下の任期付き雇用だった。大学を転々とするケースも少なくないという。

 携わる期間が短く限られていては、長期的な展望に立って研究者に伴走したり、企業や地域と深い関係を築いたりすることは難しい。安定的な雇用と待遇の改善は欠かせまい。国は継続的な財政支援を検討するべきだろう。

 本格導入から10年余りで、URAの一般的な認知度はまだ低い。導入は国立大が中心で、私立大は一部にとどまる。現在は、博士号を持った元研究者や企業団体出身者が多くを占めているが、人材の育成や発掘も大きな課題である。

 必要な知識や実務経験を考慮した認定制度が始まっている。文科省や各大学は、業務内容や魅力の周知、採用後研修の充実に一層力を入れてもらいたい。

 研究力の向上には、内外からの柔軟な人材登用や大学間連携の推進など抜本的な基盤整備が必要だ。

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