杵築市の社会福祉法人がスギ苗を初出荷 施設利用者が栽培、市が穂木購入費など補助【大分県】

スギ苗をネットに詰める施設の利用者=杵築市のみのり村
スギ苗をネットに詰めて出荷

 【杵築】杵築市日野の社会福祉法人「みのり村」(大木隆理事長)が、施設利用者の栽培したスギ苗を別杵速見森林組合に初出荷した。戦後に植樹した人工林が伐採期を迎え、再造林するスギ苗のニーズが増している。労働力が不足する中、森林環境譲与税を活用するなどして市が支援した。

 森林環境譲与税は、森林の荒廃や林業の担い手不足に悩む自治体を支援する税制。市は、苗の基となるスギの穂木(ほぎ)の購入費など約50万円を補助した。

 みのり村は、県の推奨品で花粉が少ないシャカインスギを使った。穂木を1年間育て、高さ40センチほどのスギ苗にした。9日、敷地内のビニールハウスで施設利用者4人が作業。専用の機械で土ごとコンテナから取り出して、25本ずつネットに詰めた。今年は1025本を出荷した。

 同法人ワークセンター「誠」の真砂忠係長(64)は「できるのか半信半疑だったが、思ったほど手間がかからなかった。花の苗を育てるのと変わらない。来年以降、出荷量を増やしていきたい」と手応えを感じた様子。市農林水産課の長野克也さん(50)は「2020年から事業を始め、ようやく出荷にこぎ着けた。今後も譲与税を活用して支援を続けていきたい」と話している。

 県の林業統計(21年度)によると、必要なスギ苗211万8千本のうち、県内では135万本を生産。残りは宮崎県など県外に依存している。県森林整備室の河野賢一室長補佐(54)は「県内産を増やして苗を安定的に供給する必要がある。杵築市の取り組みが、他の自治体に波及することを期待したい」と話している。

© 有限会社大分合同新聞社