「復興に向けての第一歩」 冬は暖かく夏は涼しい“インスタントハウス”  能登半島地震の被災地で設置依頼が次々に届く

能登半島地震の被災地では、長い避難所生活が強いられています。
少しでも「インスタントハウス」で快適に過ごしてもらえたらと、開発した名古屋工業大学の教授が奔走しています。

能登半島地震でおきた火災。石川県輪島市の名物「朝市」は焼失しました。

(被災した人)
「何もない…」
「本当に泣きたくなるけど仕方ない」

1月24日、 その「朝市通り」近くに設置されたのは、名古屋から運んだ簡易住宅「インスタントハウス」です。直径約5メートル、高さは約4メートル。

(名古屋工業大学・北川啓介教授)
「復興に向けての第一歩として、これを建てたいと依頼を受けた。一日でも早くということで、ここに建てることにした」

依頼を受けたのは、建築設計が専門の名工大の北川啓介教授。

2011年の東日本大震災で、石巻市の避難所を視察したことをきっかけに、被災地にすぐに設置できる住宅をつくろうと、このインスタントハウスを開発しました。

(名工大・北川教授)
「小学3年生と4年生の男の子が私の横にずっとついてきていた。グラウンドを指さして 『なんで仮設住宅が建つまで3~6か月もかかるの。 大学の先生なら来週建ててよ』と言われた。何もしてあげられなくて。それが悔しくて。名古屋に帰る便からインスタントハウスの研究を始めた」

部品の数を極力減らし、 設置時間が短くなるよう開発しました。

まずはテントシートに空気を送り込んで膨らませ…ビスで固定。内側から断熱材を吹き付けます。完成まで約3時間。慣れれば、一人でも組み立てられるようになると言います。

北川教授は去年、トルコ・シリア地震やモロッコ地震の被災地にもインスタントハウスを届けました。

ただ、能登に訪れた厳しい寒さ。設置作業はこの日、雪が降る中で行われました。

(名工大・北川教授)
「(Q.袖まくりをしているが、寒くない?)(被災地への)気持ちでやっているので、言われると寒いと思い出すが、やっている時は一生懸命で寒さを忘れてしまっている」

設置を依頼したのは、朝市に出店していた住民です。

着替えや休憩所、診療所の代わりになる“インスタントハウス”

(設置を依頼・木村吉隆さん)
「こんなに大きいんだ。これはいいわ。テーブルを置いたら最高ですね。普通の家みたい。8人くらいは普通に使えるのでみんなが集える場所にしたい」

(被災した住民)
「暖かい。きょうはすごく寒いので、こんな家があったらいいと思う」
「子供たちが『かまくらだ』と言って喜びそう」

インスタントハウスは、厚さ10センチほどの断熱材で全体を覆うことになるので、冬は暖かく夏は涼しい作りだと言います。現在、輪島市の避難所の敷地にも3棟が設置されています。

(避難している子ども)
「上(天井)もきれいだし暖かい」

実は北川教授は、地震発生直後に輪島市に入り、まずは「屋内用」の段ボール製
インスタントハウス10棟を避難所に届けました。こちらは、1棟約15分で組み立て可能です。

北川教授は連日、石川県の避難所を中心に回ってインスタントハウスの設置を続けています。

七尾市の避難所の体育館には68棟が設置。ともに組み立てたのは、地元の高校生たちです。設置されたインスタントハウスは着替えや休憩所、そして診療所がわりにもなっています。

現在、北川教授のもとには行政や医療関係者などから、設置依頼が次々に届いているということです。その数、屋外用が約500棟、屋内用が約2500棟。建設費用は名工大が立ち上げた基金があてられ、すでに2800万円以上が全国から集まっています。

(名工大・北川教授)
「みなさん我慢をすごくしているので、そういった人たちが少しでも未来やこれからの街のことを考えられるように、どんどん皆さんと一緒に建てていきたい」

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