「津波火災」1500平方メートル焼失 珠洲・宝立、鎮火に14時間

「津波火災」が発生したとみられる現場=29日午後2時15分、珠洲市宝立町鵜飼

  ●珠洲消防署が30日実況見分

 能登半島地震による津波の被害を受けた珠洲市宝立(ほうりゅう)町春日野・鵜飼(うかい)で発生した火災で、約1500平方メートルが焼失したとみられることが、京大防災研究所などの調査で分かった。津波の漂着物から家屋に火が燃え広がる「津波火災」と分析している。珠洲消防署は30日、現場の実況見分を行う予定で、署などによると、断水で消火栓が使えなかったため、鎮火まで約14時間かかったという。

 珠洲消防署によると、火災は1日午後6時31分ごろに発生。現場は国道249号と海岸の間の住宅密集地で、地震や津波で倒壊した家屋、電柱が道路をふさぎ、消防車は現場に近づけなかった。

 消防隊は近くの水槽や小川から水を引き込み放水を続けたが、火の勢いは止まらず、鎮火したのは2日午前8時半ごろだった。火災の死者はいなかった。

 現場を調査した京大防災研究所は、焼失面積をテニスコート6面分に相当する約1500平方メートルと分析。津波で流された家屋、車などががれきとなって集積し、家庭用プロパンガスや車の燃料が漏れて引火した津波火災の可能性がある。

 現場近くで自宅が被災した石井吉太郎さん(74)=宝立町春日野=は「家が燃えないか心配で眠れなかった」と話し、会社員の田中綾子さん(46)=同=は「停電で一帯が真っ暗な中、炎が不気味だった」と振り返った。

 がれきなどでふさがれていた国道249号で撤去が進み、実況見分ができるようになった。

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