漁業に爪痕 ベニズワイ水揚げ激減 網も損壊

27日に水揚げされたベニズワイガニ。量は例年の5分の1だった=射水市の新湊漁港

  ●ホタルイカ、シロエビも懸念

 能登半島地震で富山県内の漁業が大きな打撃を受けている。富山湾を代表する水産物のベニズワイガニの水揚げ量は激減。地震による漁具の損壊や海底の地形変化のため、春のシロエビ、ホタルイカ漁などへの影響も懸念される。県漁連は「今後、どれだけ被害が広がるか想像もできない」とし、漁業者からは「早急な支援の手がないと、とても生活できない」と悲痛な声が上がる。

 射水市新湊地区のベニズワイガニ漁は津波で多くのカニかごが流され、発災後は全3隻のうち1隻のみしか出漁できていない。地元漁業者によると、海底の地滑りでかごが地中に埋もれ、カニの姿も見当たらなくなったという。

 唯一、かにカゴが無事で出漁できている漁船「翔冠丸」では、27日の水揚げ量が例年の5分の1の150匹にとどまった。地震との関連性は不明だが、発災後に水揚げは激減し、20匹しか上がらない日もあるという。観光客に人気だった新湊漁港の昼競り見学は中止したままだ。

  ●「観光客も戻って」

 船主の尾山憲治さん(57)は「早くカニも観光客も戻ってきてほしい。これからの生活が不安だ」と吐露した。

 県漁連によると、底引き網漁では地震で海底に生じた段差や突起に網が引っ掛かり破ける被害が発生している。このままでは、4月に解禁される春の味覚「シロエビ」の漁にも影響が出る可能性がある。このため、県漁連では海底の変化について調査を進めている。

  ●刺し網漁も深刻

 漁業者が一人で漁をすることが多い刺し網漁も深刻な状況だ。一人では地震で漁場に散乱した漁具などの漂流物を片付けるのもままならない。

 本来ならノドグロなどが捕れる稼ぎ時にもかかわらず、新湊漁協の刺し網漁業者は地震後、一度も海に出られていない。同漁協理事の岩脇俊彦さん(43)は「1人で撤去作業をするのは大変。零細事業者に向けた支援も行ってほしい」と期待した。

 富山市の水橋漁港では地震で定置網全5カ所が壊れた。うち2カ所の修復が終わり、29日に今年初めての定置網漁ができた。ヤリイカ、スルメイカなどが水揚げされたが、漁獲量は「とても言えないほど少なかった」(水橋漁民合同組合)という。

 3月からのホタルイカ漁に使う定置網2カ所は復旧のめどが立っておらず、安倍久智組合長は「網が使えないと稼げない。3月までに復旧させたい」と話す。網の修復費用は既に7千万円を超え、今後も膨らむ見通しだ。

 魚津漁協の漁業者でもカニかごなど漁具がなくなる被害が相次いだ。漁協によると、現在でも漁に出られない人が多くおり、担当者は「最盛期に漁ができず、相当な痛手となっている」とため息をついた。

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