大関確実の琴ノ若関、初場所終え会見 平常心、力出し切れた

「やってきたことを信じて戦えた」と初場所を振り返る琴ノ若関=千葉県松戸市・佐渡ケ嶽部屋

 大相撲初場所で13勝2敗の好成績を挙げ、来場所の大関昇進を確実にした関脇琴ノ若関(26)=佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若、尾花沢市出身)の長男=が千秋楽から一夜明けた29日、千葉県松戸市の佐渡ケ嶽部屋で記者会見した。「平常心で、やってきたことを信じて戦えたことが結果につながった」と笑みを交えて振り返り、最高位・横綱を目指す意欲を示し、本県ファンへの思いを語った。

 今回の初場所は、自己最多13勝、横綱との優勝決定戦、技能賞獲得と、自身にとって初物ずくめとなり「上を目指す上でいい経験をさせてもらった」と述懐した。大関昇進への意識は「意外になかった」そうで、優勝決定戦でも気負いや緊張は感じず、力を出し切れたという。「強い気持ちで、いい相撲を取る」と、目の前の取組に集中する姿勢を最後まで貫き通し、結果を手繰り寄せた。

 今回で大関昇進の目安とされる直近3場所合計33勝に到達した。31日に昇進伝達式が行われる見通しで、この日は「かつて部屋の大関は周りを引っ張ってくれた。自分もそうなりたい」と表情を引き締めた。伝達式での口上や、母方の祖父で元横綱の「琴桜」のしこ名をすぐ襲名するかどうかは、未定だとした。

 「大関になれば難しさが分かる」と話す綱とりに向けた決意も口にし、「全部を磨かなければならない」と力を込めた。「ゆかりの力士」として応援する本県ファンに対しては「来場所も自分らしく相撲を取る。引き続き応援していただけたらうれしい」と語った。

県内、子ども力士の励みに

 元幕内大岩戸や元十両北勝国らを輩出する鶴岡市の鶴岡少年相撲教室は、小学生と園児の計5人が在籍し、三川チャレンジ相撲スポーツ少年団と合同で稽古に励む。指導者の小野寺貴史さん(35)は「お父さんの頃から山形の力士と言えば琴ノ若。今場所はいつになく盛り上がり、ゆかりのある力士の活躍は子どもたちの刺激になっている」と話す。櫛引西小6年上野琥楠君(12)は「琴ノ若のように立ち合いでぶつかり、まわしの取れる力士になりたい」と力を込めた。

 酒田市の酒田相撲教室に通う酒田六中3年仲條峻太郎さん(15)は健闘をたたえ「優勝、横綱を目指してほしい」と期待を込めた。自身は秋田県の強豪校への進学を目指しており、「高校では琴ノ若の土俵上での礼儀作法や所作をまねて練習に励みたい」と意気込んだ。

 将来力士を目指している米沢相撲教室スポーツ少年団の高橋杏璃(あんり)君(12)=高畠町屋代小6年=は「初場所の琴ノ若からはいつも以上の気迫を感じた。次は横綱を倒して優勝して」と声を弾ませた。加茂水産高相撲部の2年田村蒼汰さん(17)は「どんな相手にも力強く向かっていく姿が格好よかった。自分も力負けせずに前に出ることを心がけたい」と意気込んだ。

 元幕内大岩戸の上林義之さん(42)は「新三役昇進後は負け越しがなく、安定感が増した。上位の水に慣れ、思い切りも出てきた。今の地位を保つのではなく、上を目指すという気持ちの切り替えもうまくできたと思う」と分析。「ここ数年、大関に昇進した力士は、志半ばでその座から落ちる人が多いが、やはり横綱・大関は別格として他の力士の壁になってほしい。照ノ富士がとてもいい例で、満身創痍(そうい)でありながら優勝するのは本物だからだ。本物の大関、そして横綱になってほしい」と話した。

昇進祝い垂れ幕、準備は万全

 琴ノ若関の大関昇進正式決定に合わせ尾花沢市は、市役所庁舎への祝福の垂れ幕設置を予定している。大関としてのしこ名は、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇、同市出身)から継いだ「琴ノ若」を続けるのか、母方の祖父で元横綱のしこ名「琴桜」を襲名するか、まだ分かっていない。琴ノ若関ゆかりの同市は、両ケースに対応できるよう万全の準備を進めている。

 昇進後のしこ名をどちらにするか、琴ノ若関は28日に「(親方に)思いは伝えている。当日のお楽しみ」と話した。同市は垂れ幕の発注先に、しこ名決定と同時に印刷するよう頼んでいる。選択がどちらでも、琴ノ若関の家族への思いがうかがえる結果となる。同市の担当者は「関取本人の希望が反映された名前を誇らしく掲げ、市民と喜びを分かち合いたい」と話した。

 今年8月11日には、市サルナートを会場に夏巡業が予定されている。担当者は「夏巡業は第二の古里への凱旋(がいせん)になるだろう」と盛り上がりを期待した。

相撲の練習に励む子どもたち=鶴岡市屋内相撲場

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