大人も一緒に吹奏楽 中学部活「地域移行」前に、山形市が実証事業

中学生と大人が一緒に活動する「ほっとなる吹奏楽部」=28日、山形市七日町2丁目

 中学校の休日の部活動を地域団体に委ねる「地域移行」で山形市は本年度、文化部活動の受け皿づくりとして吹奏楽部を対象に実証事業を展開している。国は可能な限り早期の実現を目指すとの方針を示すが、学校や地域が抱える課題はさまざま。教育現場の模索は続く。実証事業は音楽が趣味の大人も参加可能な点が特徴で、幅広い年代による合同活動モデルとして定着の可能性を探っている。

 山形市七日町2丁目にある楽器店「富岡本店」のホール内。2月4日の発表会を控え、練習に打ち込むメンバーのホルンやフルートの音色が流れる。「前回よりも見違えるようにうまくなっている」。指導するヤマハインストラクターの佐藤達郎さん(仙台市)が明るく語りかけ、レッスンは和やかに進んだ。

 文化庁が全国で実施する実証事業の一環で、富岡本店が中心となり、昨年8月に取り組みを開始した。「ほっとなる吹奏楽部~すいぶ~」として月に3回練習し、参加者は中学生や会社員など計5人。母親と一緒に通う上山北中2年の高橋南音(なお)さん(14)は学校でも吹奏楽部に所属し、「楽器を吹きたいので参加を決めた。丁寧に教えてもらえるので楽しい」と話した。

 吹奏楽部の地域移行を巡り、学校外での練習にクリアすべきハードルが多い。楽器の運搬に労力と費用を要する上、活動可能な公共施設は限られる。吹奏楽部を持たない学校もあり、受け皿づくりの課題は多岐にわたる。

 今回、市と楽器店が連携することで、解決の糸口を見いだす狙いがある。大人も参加対象としたのは、学校卒業後に吹奏楽から離れてしまった人たちが、親しめる場をつくるためだ。多世代交流で生徒が得るものも多いと見込む。富岡本店の富岡宏一郎常務は「生徒数の減少で吹奏楽部が廃部となるケースもある。生徒の誰もが音楽に親しめる機会を提供する必要がある」と強調する。

 市は、市主導で別の実証事業「やまがた市民吹奏楽体験講座」も実施している。中学校の垣根を越えて参加者を募り、指導者に山形大の吹奏楽団などを迎えている。活動の認知度不足もあってか、ほっとなる吹奏楽部の取り組みと合わせ、参加する中学生は限定的だ。市は引き続き、地域移行に向けた課題を精査する方針で「部活動における子どもたちの選択肢を増やしたい」としている。

【メモ】 県教育委員会によると本年度、スポーツ庁や文化庁の委託事業で、県内23市町村が地域移行に向けた実証事業を実施。このうち文化系部活動対象は山形、中山、小国の3市町。山形市の「ほっとなる吹奏楽部」は小学4年~中学3年が経験の有無を問わずに活動でき、参加料1日千円。一般は経験者対象で1500円。発表会は山形市のやまぎん県民ホール・スタジオ1で2月4日午前10時半に開演。入場無料。

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