社説:施政方針演説 政治改革の覚悟どこに

 政治改革への決意も覚悟も伝わってこない。

 自民党の根深い金権体質に不信が募る中、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。

 通常国会の最大の焦点は「政治とカネ」である。首相は自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた党の改革中間報告に触れ、「信頼回復を果たして政治を安定させ、重要政策を実行する」と従来の発言を繰り返した。

 金の流れの透明化に欠かせない政治資金規正法改正は「各党との協議」に委ねるとし、使途の公開が不要で野党から廃止案も出ている「政策活動費」については、言及すらしなかった。

 事件を引き起こした政党のトップとして、あまりにも主体性を欠くのではないか。

 信頼回復のためには、何よりも裏金の実態解明が不可欠である。政治とカネで集中審議した演説前日の衆参予算委員会で、首相は党幹部に議員への聴取を指示したと説明したが、期限も手法も示していない。一刻も早く、第三者の目を入れた調査を徹底すべきだ。

 能登半島地震への対応では、「復旧・復興支援本部を新たに設置する」と表明した。被災者の帰還と被災地の再生に取り組むとしたが、2次避難を余儀なくされている現状をどう認識しているのか。

 人口減少で「消滅の危機」も指摘される自治体では、災害を機に地域が縮小する流れが加速しかねない。そんな不安を解消するメッセージがなければ、復興の支えとなる希望につながらないだろう。

 首相が「政権の最大の使命」という経済再生に関しては、昨年以上の賃上げによる好循環を訴え、6月からの所得税・住民税減税をアピールした。

 だが、借金頼みの減税では財政の持続可能性に懸念が強まるばかりだ。防衛費の「倍増」や、「異次元」という少子化対策で必要となる国民負担の説明から逃げているとしかみえない。

 今月中旬の共同通信の世論調査では、岸田内閣の支持率が3カ月連続で20%台と低迷する中、政治資金規正法改正による厳罰化が「必要だ」は86%に上った。

 政治改革を巡る与野党の協議や新年度予算案の審議で、首相には率直な説明と思い切った指導力を改めて求めたい。

 野党の連携も問われる。政治とカネの問題が中途半端な幕引きとならないよう、一致点を広げて、実効性のある改革を実現しなくてはならない。

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