猫は家族、避難も一緒に 輪島の塗師・坂本さん

愛猫「ビビ」をかわいがる坂本さん夫妻=黒部市宇奈月温泉

 能登半島地震で被災した塗師(ぬし)坂本雅彦さん(65)=輪島市河井町=は、「飼い猫は家族の一員。ずっと一緒にいたい」と1日の発災以降、行動を共にしている。自家用車内にトイレ、寝床など環境を整え、二次避難先の黒部市宇奈月温泉にも連れてきた。自然豊かな黒部市に移ってからは元気になり、坂本さんは愛猫に励まされるように仕事を再開しようと前を向いている。

 坂本さんは妻恵子さん(67)、長男泰輝さん(35)と3人暮らしで、猫を飼い始めてもう5年になる。名前は「ビビ」。おびえ、ビビっていることが多かったので名付けた。1日、自宅にいた坂本さんは地震で冷蔵庫の下敷きになった。何とかはい出し、ビビを捜したが、見当たらなかった。外出していた妻を捜しに出て戻ると、部屋から飛び出してきた。

 坂本さんはビビを抱き上げ、輪島消防署に身を寄せた。餌を車に詰め込み、車内をビビのすみかにした。しばらくは車中泊し、一緒に過ごした。

  ●宇奈月で「次の一歩を」

 地震のショックからか、震え、食事と排便の回数は減ってしまっていた。それが、黒部市宇奈月温泉に避難してから回復したという。

 「ビビも頑張っている。自分も次の一歩を踏み出さんとね」。坂本さんは勤務する輪島市の漆器工房社長から「ペットと一緒に住める部屋を用意するから戻ってこないか」と誘われている。宇奈月温泉で少しゆっくりしてから、輪島塗の業界復興のため、戻ってまた仕事を始めるつもりだ。

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