テレビで見てた人がそのままO-EAST裏のエレベーターから出てきた!
──よろしくお願い致します! 今回、アコースティック2マン開催とのことですが、有村さんと健康という並びの新鮮さに嬉しい驚きもあります。両者の関係…いつぐらいからお付き合いがあるんでしょうか?
有村:まず、(松本)明人くんは、僕が共通の友達に紹介してもらったことがきっかけで出会いました。音楽のジャンル的には違うんですけど、バックステージとかでとかでちょこちょこお話しさせていただいてましたね。悠介くんの場合はlynch.が同じような界隈にいるので、存在はもちろん知ってました。悠介くんもPlastic Treeを知ってくれてて、一回、名古屋でPlastic Treeとlynch.で2マンさせてもらったときに、意気投合した感じですかね。お互いのバンドのことも知れたんですけど、lynch.の中でも特に悠介くんと音楽的な嗜好がすごく似てて。僕のソロでずっとギターを弾いていたhiroくんがやっていたtéっていうバンドをすごい好きっていう流れもあって、結構仲良くさせてもらってたんですよ。それでhiroくんが病で亡くなってしまったときに、ぜひ“僕のソロでギター弾いてくれませんか?”ってお願いをしたような経緯ですね。
──出会った年数で言うと、明人さんのほうが先なんですね。意外でした。
松本:調べ直したら、2014年の5月19日月曜日に…。
有村:曜日まで! すごいです。
松本:同じイベントに出させていただいておりました。
有村:性格が出ますね。マメですね、明人くん。で、悠介くんと喋ったのはもっと後。
悠介:さっき仰っていた、名古屋で2マンしたあとの打ち上げだったと思うんですけど…。
有村:そうだね。打ち上げでも結構喋った。それで言うと明人くんもプラのことを知ってくれてて。ネジ。で弾き語りをやったときもあったし、バンドでの共演もあったり、僕のイメージだともうかなり昔から知り合っていた気がするんですよ。
松本:もう8~9年前とかですよね? 時間が経つのは早いですよね…。
有村竜太朗
──お互いの第一印象みたいなものって、明人さんは覚えてらっしゃいますか? 初めて会った有村竜太朗さん。
松本:第一印象は…テレビで見てた人です!
悠介:(笑)
──直接の出会いよりも先に、すでに有村竜太朗像があったということですか。
松本:実際に会ってもイメージと違いはなかったですね。むしろ、テレビで見てた人がそのままO-EAST裏のエレベーターから出てきたぞ! って感じ。そのまんまです。
──逆に竜太朗さんにはどのように映りました? 当時の明人さん。
有村:んー、繊細そうな人だなって。あと、すごい優しそうな子だなぁみたいな。でも、彼の音楽を聴いたら、すごい良かったんですよ。周囲の人間から明人くんのお名前も聞いていたので、すっと話もできて自然な流れでその日に一気に仲良くなれたような感じだよね? ただ、その日はセッションイベントみたいな感じだったんで、またしばらく会わなくなっちゃったり。
松本:そうですね。一気に仲良くはなれたんですけど、すごく頻繁に…とまではならなかったですね。
──なるほど。時系列的におそらくその間に竜太朗さんと悠介さんと出会いがあったわけですけど、もともと音楽的な住所が近いお二人の第一印象はいかがでした?
悠介:僕も明人くんと同じなんですけど、初めてお会いしたときは“イメージ通りだ”と思いました。纏ってるオーラも雰囲気もイメージのまんまだなと。ただ、それから親しくなって一緒にお酒を飲むようになってからは、いい意味で印象が変わりましたね。もっと人間らしい部分に触れられたというか。なんだろうな、本当に温かいんですよね。実は人情深くて…お酒を介してそういう部分も知れて、より好きになりましたね。こういう温かい人が、ステージではあの世界観を表現しているっていうそのギャップがたまらないですね。
有村ソロと健康は音楽的にマッチングがいい
──世界観だけじゃない部分。よりコアな内面っていうところですよね。ところでお二人は深酒するタイプですか?
悠介:始まったらもう朝までが基本ですね(笑)。
有村:そこはまあ(笑)。
──では今回の2マンの後も、場合によっては3人で朝まで行く可能性が。
有村:はい。確定してますね。
悠介:行けるかな?(笑)
松本:(笑)
──竜太朗さんは翌日に桜井青さんとの2マンも控えてますが…。
悠介:そうですよ!
有村:ペース配分だけ…考えないでやろうかなと思ってますけど。
──むしろ考えない! いや、最高ですね。互いに今回、ソロワークスと健康っていうことで、母体になるバンドとはややスタイルが異なると思うんですけど、そのあたりはいかがですか?
有村:今回の2マンに向けて健康さんの音源を聴いて、すごくしっくり来たんですよ。と言うのも、悠介くん自身が好きな音楽的嗜好とか実験的なことをちゃんと体現しているなって。lynch.のハードさとは違いますけど。明人くんも前から知っているので、彼の歌だなって一聴しただけで腑に落ちる。納得できたんですよ。ライブも一回観させてもらって、自分的にもすごい好みの音楽で、こんなに早く対バンできて正直嬉しいです。自分のソロ活動の音楽とすごくマッチングがいい。2人とは個人的に友人としての関係もありますが、そういう背景を差し引いても、僕のやっている音楽と合うなぁと思ってます。
健康(悠介+松本明人)
── 一方、健康サイドのお二人はどうですか? Plastic Treeとはまた違う、有村竜太朗の世界。
松本:強いて言うなら…意識されているかはわからないんですけど、洋楽性を感じます。J-POP的なキャッチーさを敢えて精査、排除しているほうがソロなのかな? と思ったりしました。あと、これは関係ないんですけど、ライブを観させていただいて、僕と一緒に活動してる悠ちゃんが、竜太朗さんの隣で弾いてるってこともすごい嬉しかった。優しいお兄さんが優しいお兄さんの隣でギター弾いてる光景が親戚の集まりみたいな感覚って言うのかな。
有村:あっ、はい。優しいお兄さんですよ。
悠介:はい(笑)。
──あははは。洋楽っぽいけど、温かい空気でもあると。
松本:温かさは僕が勝手に感じているだけかも知れないですけど(笑)。
悠介:竜太朗さんのソロでも一緒にやらせてもらっている僕からすると、プラとの差って言ったら、竜太朗さんが通ってきたであろう、80~90年代の洋楽だったり、自分の好きなものがより自然に反映されているという印象ですかね。プラだったらそれぞれ皆さん曲を作るし、その色が出てくる良さがありますけど、ソロはそうじゃないというか。好きなコード進行であったり音のイメージを、自分が思った通りの気持ち良いところにフォーカスして鳴らしてるのかなって。僕もバックボーンとしては、好きな音楽が近いので楽曲のアプローチからはシンパシーも感じます。竜太朗さんと一緒にやらせてもらえるようになってから、自分がもともと通ってきたものを自然と作品に投影できるし、演奏面でも割と自然体でいられますね。
松本:リバーヴのかかったファズの音とかもめちゃくちゃいいんですよ。
──悠介さんはライブだけでなく、竜太朗さんのソロ作にRECでも複数曲で参加されていますね。
悠介:音楽的な共通言語をお互いに持っているような気がするので、RECも自分の思う自然なものを提案して、まずは反応を伺う感じなんですよ。ただ、ちょっと違うね…とかっていうのも特に出てこなくて、割と最初に提出したもので反応が良い。んー、だから根本的に合うんでしょうね。
──「色隷」とかもだいぶ変わりましたよね。手触りが。
有村:あのリアレンジしたやつですよね? 「色隷」なんかは特に、悠介くんはドラムの録りから参加してくれて。僕にはないアイデアも入れ込んでくれたし…っていうかほとんどアレンジしたんじゃない? 「色隷」は我ながらこの人(悠介)にお願いして良かったなと心底感じましたよ。
今回の2マン企画で有村が健康を誘った理由
──シンパシーや相互理解の深まりもあったと。で、実はこの2マン企画、竜太朗さんのほうから、ぜひ健康さんとやりたいっていう提案があったという話を聞いたんですけど…。
有村:そうです。健康さんとやりたいよねみたいな話はしてたんですけど…アコースティックの2マン企画になるとは思ってなかったんですよ、ぶっちゃけ。でも、アコースティックも好きなんで、どうなるか楽しみですよね。
──同じような温度感をイメージしてらしゃったのかなと思ってました。
有村:健康さんとはそういうイメージですかね。そこをお客さんにも楽しんでもらいたいです。でもソロワークスでは、温度感が違うようなバンドさんとの対バンも全然したいんですよ、実は。ただ、健康さんみたいなことやってる人って僕の周りいない。それでいてすごく似ている部分が多いので、どういう作用が起きるのかなっていう興味から、ぜひ一緒にやろうってお誘いしました。
──健康のお二人は、そのオファーが来たときは率直にどう思われましたか?
悠介:まず昨年、この新宿LOFTのイベント『2TO2』のこけら落としに僕らが出させてもらって、ある意味、僕らありきのイベントなのかもしれないって思ってしまうぐらいだった(笑)。…って冗談はさておき、健康が始動してから、こういうイベントに呼んでもらう機会があまりなかったので、僕らのこと知らない人に知ってもらえる機会があることが、すごく嬉しい。しかも、最初はGOATBEDさん、今回は竜太朗さんと…先輩と一緒にやらせてもらうっていうのも。あと、音楽をわかってくれているお客さんに聴いてもらいたいので、そういう意味でも共演者にとても恵まれてます。もちろん、竜太朗さんに指名していただいたのも嬉しいですね。
松本:僕は真空ホロウを昨年の今ごろに終幕させたんですけど、それまでの期間とか心身ともに慌ただしくて全然ご連絡をできてなかったんですね、竜太朗さんに。だから今回こうやってお誘いいただいて、“嫌われてなくて良かった!“ってマジで心の底から思いました(笑)。
悠介:ははは(笑)。
──あはははは。嬉しかったじゃなくて“安心した”。竜太朗さんは別に嫌ってないですよね?
有村:当たり前じゃないですか!(笑)
松本:良かった…。これ以上、深掘りしないでください(笑)。
──あとこれ、明人さんにお聞きしたいなと思ったことがあるんですけども、健康の作品って実在の映画とリンクしていたりするじゃないですか。いくつか具体的な映画の題材があると思うんですけれども、その着想やチョイスってどういう基準なんですか? 健康の作品に落とし込むモチーフとして。
松本:僕にとってのバイブル的なものだったり、あるいは衝撃的な映画ですね。たとえば「Monster」という楽曲は、是枝裕和監督の『怪物』からインスパイアされています。観たときに、上映中は我慢していたんですけど、劇場を一歩出た瞬間から涙が止まらなくなっちゃって。でも、自分ではどうして泣いてるのかわかんなくて。そういう、これまでに自分が感じたことのない、なったことのない感情をになった映画をチョイスしています。
──ただ、そこで抱いた感情を鮮明に具体化しようっていうアプローチでもないですよね。健康の音楽って。
松本:無論、YouTubeのファスト映画みたいな意味は全くなくて。僕がもし、その映画のスピンオフの脚本家さんや監督さんに抜擢されたならどうするかな? というイメージが近いですね。
──そこがキモですよね。モチーフから具体化は決してしないのが面白いなと思って。たとえば喜劇を見て明人さんがそれを健康の世界観に落とし込んでも、その健康の音楽を聞いた人が全く異なる感情を抱く可能性がある。
松本:それで良いと思います。
──間違っていい感情の伝言ゲーム感が情報社会に翻弄される人間のようでもあり、実に独特で。健康の音楽をフィルタリングすることでリスナーが自らのコアに辿り着くような体験というか。これ、明人さんの世界観と悠介さんの音、制作の際に順番って決まってるんですか?
悠介:曲に関してうちはちょっと特殊で。僕が作ったインストをまず一つの素材として、提供するんですよ。それを明人くんが、分解なりリアレンジしていく。そのとき、明人くんがこの映画を題材にするとかっていうのを考えるんですけど、実は僕はその答えを知らないんですよ。仮歌に歌詞が入った状態で戻ってきたときに、初めて“この曲はこの映画を題材にしてるんだよ”って知るんです。だから歌詞を見たときに、ようやく“あ、なるほどね”って。
松本:タイトルや歌詞、“これがあの登場人物で~”みたいな設定も資料にまとめて共有するんです。
有村:誠実ですねぇ。
松本:いただいた大切な音なので。
イエーガーマイスターを飲みながらレアな共演を楽しんでほしい
──今回は新宿LOFT発起のイベントということで、このRooftopを読んでいる方に皆さんと新宿LOFTの関係についてもお聞かせください。
有村:Plastic Treeは初ワンマンをしたのが移転前の新宿LOFTなんですよ。憧れの場所でしたよね、当時から。プラはそれ以降、数えきれないくらい山のように様々な会場でライブをやってますけど、当時のワンマンの光景はめちゃめちゃ覚えてます。初めてのワンマンだったし、目標のライブハウスでしたからね。
悠介:29年前なんだ。すごいですね。
松本:すごい。
有村:その後、一番覚えてるのは、ソロ活動の母体になったネジ。っていうコピーバンドなんですけど、新宿LOFTでも何度もライブやらせてもらいました。昨年亡くなってしまったオナン・スペルマーメイドとネジ。の2マンも印象深いですね。昔もそうですけど、ここ10年くらい新宿LOFTではありがたいことに好きに遊ばせてもらってます。ライブをしに行く会場なんですけど、みんなと遊びに行く場所みたいでいつもワクワクするし、終わってからバースペースで打ち上げするのも楽しみ。僕も東京に出てきてからだいぶ経つんですけど、LOFTが東京で一番遊びに行ってるライブハウスって感じですかね。
悠介:僕もLOFTさんには何度もお世話になってるんですけど。結構なお酒飲んで気持ち良い状態でライブしたことがあって。それが印象深いですね。LOFTってそれが許される気分になると言いますか、非常に良い体験をさせてもらえたなと。あと、明人くんと飲みに行ったりもしたよね。ライブフロアじゃなくてバースペースのほうで。
松本:あったね。映画見てる人と本読んでる人に分かれるっていう。
悠介:二人で会話をするわけでもなく、お互い別々なことをしているんですけど、その空気感が別に苦じゃないっていう。
松本:僕はまず(LOFT系列の)下北沢SHELTERのオーディションを受けて、合格してSHELTERに出させてもらえるようになったんですよ。
──えっ、そうなんですか!?
松本:そこからSHELTERでワンマンをやらせてもらって、その次がLOFTだったのかな? ちゃんとSHELTERやって次はLOFTっていう、憧れていた往年のバンドマンの流れみたいな感じで関わらせていただきました。それが2011年とかですね。そこで出会ったLOFTの照明さんとかPAさんは他の現場にもお呼びして、お世話になったり。石崎ひゅーいくんとの2マンツアーもLOFTさんの仕切りでやったなぁ。あと、LOFTが初めてイエーガーマイスターを仕入れたとき、一杯飲むと、パキッっと折って腕に巻くタイプの光るブレスレットがもらえるよっていうキャンペーンをやってて。それが増えていくのが嬉しかったので、真空ホロウで126杯かなんか飲んで…(笑)。
有村:そんなに飲んだんだ?(笑)
松本:その年の誕生日に、イエーガーマイスター1年間無料券をもらいました(笑)。
──歪んだ親切ですよ(笑)。いかにも新宿LOFTらしいというか。
松本:そのぐらい貢献させていただいたみたいです(笑)。
──LOFTって寛容なライブハウスというか、もちろんルールは守るべきなんですけど、音楽を楽しむ異世界を継続して守っているっていう印象があります。破天荒ですよね。この2マンだと、お客さんもお酒飲んで大騒ぎって感じではないですが。
有村:どうなんですかね? でも、イエーガーは良いんじゃないですか? ハメ外し過ぎなければ。
悠介:まあ、健康的という意味では(笑)。
松本:イエーガーは薬用酒ですからね。
──では最後に、イベントを楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします。
有村:ソロ活動で対バンするのも久々ですし、ましてやアコースティックでやるっていうのもすごく珍しいので、僕も楽しみにしているので、ぜひ観に来てもらえたら嬉しいなと思っております。待ってます。
松本:僕は本当に嫌われてなくて良かったっていう思いと…。
有村:いやいや、だから嫌う理由ないでしょ(笑)。
松本:ありがとうございます(笑)。…あとはやっぱり、ご来場の皆さまにはぜひイエーガーマイスターを飲んでいただければなと思います(笑)。
悠介:健康も竜太朗さんも純度の高い音を皆さんに提供すると思うので、このレアな共演を楽しみにしていてほしいなと思います。まあ、イエーガー片手に楽しんでもいいんじゃないでしょうか?(笑)