従業員奮闘 宿泊を再開 ホテルニューオータニ高岡

宿泊部門が再開し、対応するスタッフ=高岡市内のホテル

  ●お客の声「励みに」

 ホテルニューオータニ高岡(高岡市)が1日、宿泊部門の営業を再開した。能登半島地震で屋上の給湯タンクが損壊し、1カ月にわたって宿泊休止を余儀なくされたが、ホテル従業員が奮闘し、受け入れ態勢を整えた。担当者は「あっという間だった。ほっとしている」と語りながら、久しぶりの宿泊客を出迎えた。

 「これまでに経験したことのない長い揺れだった」。ホテルの堂田孝克営業企画部長は振り返る。地震発生時はチェックインの時間帯で、多くの宿泊客は1階フロント付近にいたが、部屋に滞在する宿泊客もいたという。

 既にエレベーターが停止しており、従業員は非常階段で客室がある9階~13階まで駆け上った。一部屋一部屋に声を掛け、1階にいったん集まるように促した。グラスが割れたり、備品が散乱したりする客室もあり、従業員が片付けて安全を確認した上で、部屋に戻ってもらった。

 翌2日、設備を確認したところ、給湯タンクを支えるボルトが外れ、余震でいつ転倒するか分からない状態と分かった。万一の事態を想定して宿泊部門の休止を決めた。堂田部長は「安全にくつろいでもらえる環境が提供できない恐れもあったのでやむを得ない判断だった」と話す。

 ただ、2日も宿泊を希望する6人がいたため、市内の別のホテルに頼み込んで手配し、送迎も担当した。

  ●自ら泊まり安全確認

 タンクの復旧工事は7日に始まり、24日には客室やタンクの安全点検も終えた。翌日にも営業は可能だった。しかし、宿泊客が安全に利用できるかを確認するため、従業員が手分けして80室ある客室に実際に泊まり、お湯が出るかなどをチェックした。

 宿泊部門再開までの1カ月、従業員を支えたのは利用客からの声だ。「大丈夫ですか」「再開したらまた泊まりにきます」。電話で心配や励ましの声が連日届き、堂田部長は「心が温まった」と感謝を込める。

 1日に同ホテルで開催された北陸銀行高岡支店の取引先でつくる北栄会の「復興支援有志の集い」でも、竹田光宏社長が旅行サイトに掲載された震災当日の口コミとして「積極的な声掛けに頭が下がる思いだった」などを紹介し、「利用客の命や安心安全を守る仕事を全うすることが、いかに大切か分かった」と話した。

 営業再開した1日以降、客室は7~8割が埋まっている。堂田部長は「震災前と変わらないサービスを提供していきたい」と意気込んだ。

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