地震保険加入率、全国1位は宮城 能登地震あった石川は40位 低迷した理由とは

京都府の今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率=全国地震動予測地図より

 最大震度7を観測した能登半島地震では、家屋の倒壊や火災による消失で、甚大な被害が発生した。建物の再建には地震保険が活用できるが、地震保険の世帯加入率は地域によって大きなばらつきがある。京都府と滋賀県の加入率はそれぞれ全国35位、同30位と、いずれも全国平均を下回り、低迷が続く。今回の地震で被害を受けた石川県も40位だった。なぜ、低水準にとどまっているのだろうか。

 保険の代理店が加入する府保険代理業協同組合(上京区)によると、地震保険は単独では契約できず、火災保険と合わせて契約する。地震や噴火、津波などで建物や家屋、家財などが損害を被った場合、一定の保険金が支払われる。

 火災保険加入者の地震保険の加入率は、2022年で京都府は67.3%、滋賀県で69.2%と、全国平均の69.4%より低い。11年3月に発生した東日本大震災を機に、府は10年の39.7%、県は42.7%から大きく上昇したものの、他府県と比べれば低水準だ。今回、被災した石川県は64.7%、富山県も63.5%といずれも低かった。

 これらの地域で加入率が低迷しているのはなぜだろう。要因の一つと考えられるのは、地震の発生確率予想の低さだ。

 国の地震調査委員会が公表している20年の全国地震動予測地図のデータによると、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は、京都市で14.8%、大津市で12.7%。石川、富山両県では、金沢市で6.6%、富山市で5.2%だった。南海トラフ地震が発生すると予測されている高知市の74.8%、徳島市の74.5%などと比べるとかなり低い。

 同組合の辻本完治理事長は「地震保険の加入を勧めても、『京都は地震が少ないから』と断られるケースが多い。全国でこれほど未曽有の災害が相次いでいても、京都は大丈夫というイメージが市民には根強い」と危機感を募らせる。

 一方、一度でも大地震に直面したり、地震の発生確率が高いとされたりしている地域では、加入率が高くなっている。

 東日本大震災で被害を受けた宮城県は89.3%で全国1位。震災前の10年は68.7%だった。南海トラフ地震が予測されている高知県が2位で87.5%。3位の熊本県は85.9%だが、熊本地震(15年)が発生する前年は62%だった。

 今回の地震で最大震度6弱を観測し、過去にも新潟県中越沖地震などを経験している新潟県は73%と、石川、富山両県を大きく上回った。大阪府も18年の大阪北部地震後に10ポイント以上伸び、70.3%と全国平均を超えた。

 京都府内でも、大阪北部地震後に加入率が伸びた自治体がある。八幡市(77.7%)、宇治市(74%)、長岡京市(73.8%)、亀岡市(73.2%)などが高く、震度5強や5弱を観測した影響とみられる。

 花折断層が縦断する京滋で、地震は決して遠い地域の出来事ではない。府内では地震保険の加入を促進する動きもある。

 府と京都市は、府保険代理業協同組合と、京都損害保険代理業協会(中京区)、日本損害保険協会近畿支部京都損保会(下京区)の3団体と、防災連携協定を締結。加入を促す広報や防災知識を普及する活動を行っている。

 府災害対策課は「家屋が倒壊した場合、行政の支援金だけでの再建は難しい。いざという時に備えてほしい」としている。

■補償率に割高感も 

 地震保険の加入が伸び悩むもう一つの理由に補償の限度額がある。損害の程度が「全損」という最大の場合でも、火災保険で支払われる保険金の50%に抑えられており、「割高感があると感じさせる原因になっている」(京都府保険代理業協同組合)。

 地震保険は、1964年の新潟地震を契機に作られた官民一体の保険で、国も保険金の支払いの一部を引き受ける。限度額が設けられている理由に、地震の発生は予測が困難で、今回のように、規模の大きい地震が発生した場合、被害は広域にわたり、損害額が巨大になるためだという。保険会社の担保力や国の財政には限界があるため、支払いに支障をきたさないように上限が設けられている。

 地震保険の保険料は都道府県と建物の構造、保険金額、契約年数などによって決まっており、どこの保険会社で契約しても保険料は変わらない。

滋賀県の今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(モデル計算条件により各知るゼロまたは評価対象外のメッシュは白色表示)=全国地震動予測地図より

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