倉庫精練解散へ 3月、丸井織物と合併

3月で解散することが決まった倉庫精練=金沢市

 マルオリグループ(中能登町)は2日までに、子会社の倉庫精練(金沢市)を解散させる方針を決めた。3月1日付で丸井織物と合併させる。赤字経営が続く倉庫精練を2017年に子会社化し、立て直しを図ったが、従来の染色では黒字化が見通せないと判断。1月に新設した子会社「アップティー」に従業員約60人を移し、成長事業のプリント加工に注力する。かつて石川の繊維産地をけん引した名門が看板を下ろすことになる。

 倉庫精練は1914(大正3)年に設立され、62年に大証2部上場。2013年に東京、大阪の証券取引所の統合に伴い、東証2部に移った。丸井織物は17年に子会社化し、織り、染めの一貫生産による効率化、高付加価値素材の拡販を目指してきた。

 ただ、マルオリグループによると、倉庫精練は11年から12期連続で営業赤字を計上。コロナ以降は原燃料高騰で、黒字転換が一層困難な状況になり、従来の染色事業は昨年10月末に大幅に縮小し、実質的に休止していた。22年12月には上場を廃止した。

 一方、オンラインでTシャツなどのグッズを作成する丸井織物のプリント加工事業「UP―T(アップティー)」の受託生産を21年に開始したところ、好調に推移。プリンターの台数や種類を増やし、印刷可能な商品を拡充してきた。

 昨年7月の持ち株会社化以降、グループの統廃合を進める中、今年1月には中期経営計画(24~26年)に基づき、新設分割で子会社アップティーを設立。プリントや倉庫業など好調な事業を承継させた。倉庫精練の鈴木秀利社長、北野雅博副社長が代表権を持つ。染色関係の設備は今後、売却するなどして処分する。

 このほか、組織改編の一環として、物流を担う倉庫精練の子会社「ソーコ流通サービス」をアップティーが吸収合併する。

 マルオリグループの担当者は、倉庫精練の子会社化について、染色業界との結び付きが強まり、自社の提案力アップにつながったと振り返り、「今後は成長事業の生産拠点として再構築し、成長が見込める会社にしていく」と話した。

  ●かつての名門「時代の流れ」

 かつて岸商事、一村産業とともに「産元商社の御三家」と称された西川物産の元会長、西川文平氏(元石川県繊維協会長)が長く経営を担った倉庫精練。老舗が看板を下ろすことに業界からは「時代の流れを感じる」「寂しいものだ」などさまざまな声が上がっている。

 倉庫精練は独自の染色技術を持つ一方、小ロット多品種の高コスト体質が時代に合わず、徐々に受注が減っていた。

 石川県内の繊維業界関係者は「かつて隆盛を極めた名門だけに寂しい」と語った。以前に取引があった企業の関係者は「変化の激しい業界にあって、仕方ない部分もある。力を付けた会社だけが生き残れる厳しい世界だ」と話した。

 御三家で社名が残っているのは東レグループの一村産業だけとなっている。

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