自治医大病院の渡辺医師、被災地で視覚障害者支援 情報得にくく移動も困難 能登半島地震

被災地で視覚障害者の支援に当たった渡辺さん(中央)。両隣はチームを組んだ歩行訓練士=1月28日、石川県珠洲市

 能登半島地震の被災地で視覚障害者の支援に当たった自治医大付属病院の眼科医、渡辺芽里(わたなべめり)さんが3日までに下野新聞社の取材に応じ、現地での活動を振り返った。避難所では目から情報が得られない障害特有の困難があったといい、障害者を支える「周囲の人たちの声かけや配慮」など平時からの理解や支援の重要性を訴えている。

 日本視覚障害者団体連合、日本盲人社会福祉施設協議会、全国盲学校長会でつくる日本盲人福祉委員会(東京都新宿区)の災害支援員として、本県からはただ一人派遣された。視覚障害者の歩行を支援する専門職の歩行訓練士たちとチームを組み、1月27~29日、石川県輪島市と珠洲市で活動した。

 1日当たり10カ所ほどの避難所を巡回し、視覚障害がある避難者の掘り起こしを行ったほか、各避難所に電話相談窓口や必要とされる介助の仕方などを周知した。

 6人の視覚障害者と面会し、困り事を聞き取るなどした。情報は同県視覚障害者協会などと共有し、より生活しやすい2次避難に向けた道筋を整えたケースもあった。

 渡辺さんにとって、被災地での支援は初めての経験。慣れない避難所では介助なしでトイレへ移動することさえ難しいことを実感した。注意事項や支援情報などが文字で掲示される避難所が多いことも分かった。

 「視覚障害は見た目では分かりにくく、避難所で埋もれやすい」と渡辺さん。実際に訪れた避難所で、代表者が視覚障害者の存在を把握していないこともあった。「自分がいたら迷惑になる」と感じて、被災した自宅に戻った高齢の障害者もいたという。

 「掲示が見えづらそうにしていたり、トイレの場所が分からないようなそぶりをしていたりする人がいたら、声掛けや配慮をお願いしたい」と強調。

 一方、当事者は避難場所を事前に把握するなどし、行政や医療、福祉の関係者は地域で支援を必要とする障害者の情報を共有しておくなど、平時の備えの重要性を指摘し「栃木県でも関係者が連携を深め、災害時に対応できるようシステム構築に取り組みたい」と話した。

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