88歳廃業決意「まさかこんな形で」 輪島塗「漆芸 豪秀堂」、店全焼

作業場を見詰める坂水さん=輪島市堀町

  ●坂水さん「もう区切りを」

 輪島市中心部で起きた大規模火災で河井町の店舗が全焼した輪島塗の製造販売「漆芸 豪秀堂」が4日までに、廃業することを決めた。店主の坂水秀雄さん(88)は、ともに店を営んでいた長男豪(たけし)さんを10年前に亡くし、新型コロナ禍もあって事業規模を縮小していたところ、地震で大打撃を受けた。坂水さんは「いろいろあったが、まさかこんな形で終わるなんて」と悔しがった。

 秀雄さんは、中学卒業後から地元の漆器店で修業し、1991年、自身と豪(たけし)さんの名前を一字ずつとって豪秀堂を創業した。二人三脚でさらに店を盛り上げようとした矢先の2014年11月、豪さんが病気のため50歳で亡くなった。

 その後は業界全体の伸び悩みや秀雄さんの高齢化もあり、徐々に店の規模を縮小した。数年前からは廃業も視野に観光客や常連客に対し、どんぶり勘定で営業を続けていたという。

  ●自宅兼作業場も被災

 秀雄さんは元日、店から約800メートル離れた堀町の自宅兼作業場で被災した。倒壊は免れたが、自宅から見えた朝市の惨状に言葉を失った。後日、様子を見に行くと店は全焼だった。一枚物のケヤキに「豪秀堂」と彫られた看板も灰になっていた。

 秀雄さんは、自宅と作業場の後片付けを終えた後、地震前に注文を受けたアテの机や飾り棚などを納品し、店に幕を下ろすつもりだ。「もう区切りをつけんならん。『前から辞めようと思っていた。しょうがない』と自分に言い聞かせるしかない」と話した。自宅に掲げている豪秀堂の看板は残すという。

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