爆買いの先に

 「美」という字は「羊」と「大」でできている。漢和辞典には〈形のよい大きな羊〉を表すとある。大きいことは、美しいことらしい▲ハルビン生まれの学者、ペンネーム陽陽さんは著書で、漢字が生まれた中国では〈「大」を好む伝統的な気質〉があると述べている。観光名所は「大仏寺」「大王廟(びょう)」の名であふれる-と、挙げる例には切りがない▲大金を落とす「爆買い」の源は「大」を好む気質かもしれない、と思ったことがある。その大量買いも、コロナ禍が襲って一時は消滅した▲昨夏、日本行きの団体旅行が解かれた“開放感”や、この円安が心を揺さぶるのだろう。中国では旧正月の春節を祝って8連休を控えているが、一足先に大勢の中国人が来日しているという▲東京・銀座で、買い物袋を提げた中国人が「3百万円くらい使ったかな」とテレビで澄まして答えていた。スキー場を1日借り切ったりする「1千万円ツアー」もある。「爆買い」復活を思わせるが、なにも「買う」が全てではない。地方の名所、絶景の旅も人気という▲長崎市で9日、長崎ランタンフェスティバルが始まる。「見る」「学ぶ」「味わう」。新たな好奇心を満たす行事に、中国からも集まることを期待する。「巨大」オブジェにも、ほの明かりの「美」にも事欠かない。(徹)

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