県の新年度当初予算案には、国の重要文化財に指定された広島市にある旧陸軍被服支廠の安全対策工事の予算が、初めて計上されました。保存に向けた事業が本格的に始まることになり、今後は被服支廠をどのように活用していくかが、大きな焦点となります。
湯崎英彦知事
「これまではやむを得ない措置として1棟保存ということも考えたのだが、結果として4棟が保存できるようになったということは、感慨深いものだと考えている」
県の新年度当初予算案には、旧被服支廠の耐震工事を含む安全対策工事の予算、6億9000万円が計上されました。
RCCの取材では、県が所有する3棟の安全対策工事の総事業費は、29億5000万円です。このうち半分の14億7000万円は、被服支廠が重要文化財に指定されたことによって、文化庁の補助金が充てられる見込みです。残り半分の14億8000万円は、県と広島市が折半することになっています。
被服支廠の安全対策工事は、2024年度から26年度まで3か年度かけて実施される予定です。そして、工事終了時点で3棟あるうちの1棟=最も北側にある1号棟が、広島市に無償譲渡される予定になっています。
保存に向けた事業が、いよいよ開始される被服支廠。今後は、活用に向けた議論が大きな焦点となります。
小林康秀アナウンサー
「ここは被服支廠の3階です。屋根にある窓から光が差し込んでいまして、その光を頼りに中を見てみますと、建設なら長い年月がたっているんですけど、頑丈なつくりなんだなということを感じさせます。戦前から原爆投下を経て、そして戦後。この長い歴史の重みを感じます」
原爆投下直後は、被爆者の救護所となった被服支廠。戦後は、学校の教室や学生寮、運送会社の倉庫などとして使われました。
安全対策工事の終了後、県から広島市に無償譲渡される1号棟は、平和学習の拠点としての活用が想定されています。
活用策について松井市長は1月、次のように語りました。
広島市 松井一実市長
「例えば、展示室であるとかライブラリーとか収蔵庫、あるいは講話会場、そういったことで平和学習などに活用するということが想定されている。平和の丘構想ということで今、比治山も整備しているから、歴史、被爆の実相などを受け止めてもらえるようにする」
一方、残る県が所有する2号、3号棟と、国が所有する4号棟は、県民の交流拠点や国内外の人々が訪れる拠点として、図書館やホテルなどの施設がイメージされています。
では、国内でレンガ建築や歴史的建造物を活用した事例としては、どのようなものがあるのでしょうか。
1908年に建てられ、国の重要文化財に指定されている奈良市の旧奈良監獄。星野リゾートが、ホテル事業を運営することになっています。
星野リゾート 星野佳路代表
「監獄だったことを感じていただきながら、快適に過ごしていただくことが重要」
旧奈良監獄は戦後、奈良少年刑務所へと名前が変わり2017年、老朽化のため刑務所は閉鎖されました。
ホテルは去年、星野リゾートの最高級ブランド「星のや」にすることが発表され、1棟を監獄のままの形で残し、残り4棟を客室に改装するということです。
実は、歴史ある倉庫の活用事例は、県内にもあります。築70年以上たった県営の倉庫をリニューアルした「ONOMICHI U2」です。こちらはサイクリトが集う複合施設としてオープンし、人気を集めています。
被服支廠の活用策について湯崎知事はー。
湯崎英彦知事
「非常に大規模なものなので、お金もかかるものだし、お金がかかる以上は、皆さんが納得していただけるようなものにならないといけないと思うので、いま時点で簡単に結論が出ないというところで、改めて具体的な使い方を考えていこうということ」
今後は、安全対策工事と並行し、国と県、広島市で構成する研究会で、具体的に検討が進められるということです。