支援物資のなかには扱いに困るものも、溜まれば被災地がマンパワー不足に…災害時における本当の支援のあり方とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは“災害支援のあり方”について議論しました。

◆善意のはずが…大半が"使えない”ケースも…

能登半島地震後、被災地には多くの支援物資が寄せられていますが、そのなかには賞味期限切れのドリンクや避難所の人数分には満たない食料、衛生面が担保できない開封済みのお米、色が変わり果てたバナナ、さらには大量の古着とみられる衣類なども。これらの物資は全て個人や民間企業から送られてきたもので、こうした状況を受け、石川県では個人からの物資支援を控えるよう呼びかけています。

これまでも善意で行われているはずの支援が逆に被災者の負担となっているケースは少なからずありました。お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さんは「これは難しい問題。我々はボランティア、支援ということに関して素人だと思う瞬間がある」と頭を悩ませつつ、「良かれと思ってが、まかり通ってはダメだと思った」と率直な印象を吐露。

前明石市長の泉房穂さんも「良かれと思うのは、良かれと思う側の目線で、被災者一人ひとりのニーズに合わせ、必要なものを必要な分だけ、必要なときに、必要なところにというのが大事。目線の転換、被災者の側から見て考えないと難しい」と言います。

これまで被災地に送られて困ったものとして挙げられたものは、冷蔵庫がないなかでの冷凍食品やアレルギーの成分などが分からない成分不明の海外食品。さらには使い古した毛布や布団、下着。また、東日本大震災のときに問題となったのが、千羽鶴や寄せ書きでした。これら活用できない支援物資は廃棄せねばならず、被災地を襲う"第2の災害”と言われています。

食文化研究家の長内あや愛さんは、「(被災者が)困っていると聞くと何かしたい気持ちも分かる」と支援者の気持ちを慮り、その上で「その思いの受け皿を被災地ではない、他の地域でどう対処するかが大事だと思う」と自身の見解を述べます。

総じて、山田ルイ53世さんが「(支援物資は)自分がいらないものじゃなくて、自分がいるものを送ったほうがいい」と提案すると、泉さんも大きく頷きます。

◆被災時の行政・自治体の対応、必要な支援とは?

1月時点の石川県の対応としては、企業や団体からの支援は申し入れを受けた上でニーズを踏まえて県側が確認し、直接的な搬入は控えるよう伝えています。一方、個人に対しては、仕分けの手間を考えて受け付けず、義援金の検討を促していますが、個人が支援物資を持って直接避難所に来るケースもあるということです。

キャスターの堀潤は、東日本大震災の際、心強いと思った支援としてIT支援を挙げ、「避難所で(支援物資が)捌ききれないなか、IT企業がデータベースを作りに来ていた。被災者支援と本当のニーズをマッチングする仕組みなど、デジタルを使って支援していた。今回も自治体がIT支援に入っていたが、そうしたことが必要なんじゃないか」と言います。

また、「発災後は行政によるさまざまな支援メニューが打ち出され、補助金なども創設されるが自治体の職員はそれどころじゃない。せっかく打ち出された国の支援メニューも捌ききれない。そんななか、東日本大震災のときは総務省が応援を派遣し、国との接続を担い、本当に助かったという話を聞いた」とも。

自治体間の相互支援については、都道府県間・市町村間などさまざまなレベルで「災害時応援協定」が結ばれ、その数は1,741の自治体のうち1,692、約97%。有事の際には職員の応援や避難のための施設の提供、水や食糧の提供などが行われています。

今回も中能登町では三重・紀宝町が震災翌日から給水支援を行い、珠洲市には島根・松江市、穴水町には長野・宮田村がそれぞれ水や簡易トイレなどを届けています。

市長経験のある泉さんは、こうした協定の重要性を十分に感じつつ、「災害が起こる前から準備することが重要」と訴えます。しかし、なかには協定が結べていない自治体も存在します。ある自治体の担当者からは「災害時にどのような事態が想定されるのか実体験がないため、想定することが困難」との意見や、南海トラフ地震で津波災害が想定される地域の担当者は「必要性は認識しているが、受け入れる場合など職員のマンパワーにも限界がある」と話しているそうです。

◆本当に必要な支援を行うためには…?

最後に、今回の議論を踏まえ、本当に必要な支援はどうすればできるのか。コメンテーター陣に提言を発表してもらいます。山田ルイ53世さんは「被災された方は"もっとわがままに”してもいいと思う」と被災者を労わりつつ、「一番肝になるには、やはり自分がいらないものではなく、自分がいる(と思える)ものを支援する。やはりお金。我々も働いて納税する、それが大事だと感じた」と話します。

長内さんは「良かれと思って(支援物資を)送ってしまうこともあると思うが、そうなると被災地でマンパワーが必要になってしまうので、やはり被災地以外の場所で一元的に管理して必要なものを送るなど、被災地の前でストップをかけるようにしてほしい」と被災地に負担をかけないシステムの構築を望みます。

泉さんが挙げたのは、"被災者目線”。良かれと思って勝手に支援物資を送るのではなく、「システムも大事だが、被災者一人ひとりの声に応じることが重要、まずは目線の転換を」と主張。

キャスターの田中陽南は、泉さんの意見に同意しつつ、「"被災者と思いすぎない”こと。被災者である前に1人の人間、何が必要なのか考えることが大切」と加えます。

最後に堀は、"ソーシャルセクター強化”を提案。今回の震災でもNPOなどいわゆるソーシャルセクターが現場に入り、被災者を支えていますが、「そんなNPOの活動に対してもまだまだ支援が足りない」と指摘。

番組SNSにも「NPO団体を素人ボランティア扱いしている人が多いことが残念。自衛隊とともに彼らがどれだけ被災地を助けているか」といった声が寄せられ、堀は「NPO、ソーシャルセクターをいかに拡充できるかが鍵。彼らのなかには緊急支援を行うプロフェッショナルな集団もいる。そうしたチームを支えることも大事」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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