仄かに照らす

 灰は何かが燃えた後に残る。その字の中の「火」を「人」にすれば「仄(ほの)か」と読める。〈火なら/いつか灰になり/つめたくなってしまうけど/人は/仄かに/いつまでも〉。詩人の杉本深由起(みゆき)さんに「仄」という温かな一編がある▲人がともす明かりは冷めることなく、穏やかに心を照らす。どことなく、仄かに光る中国ちょうちん、ランタンの明かりを思わせる▲今年はステージイベントもようやく復活し、4年ぶりの通常開催になる。「長崎の冬の風物詩」という枕ことばも満を持しての“復活”だろう。「長崎ランタンフェスティバル」がきょう開幕する▲1980年代、長崎市の新地中華街のイベントに、中国の旧正月を祝う春節祭を取り入れた。ビニール製のランタンをほんの300個ほど飾り、催しといえば中国獅子舞、ちゃんぽんの早食い競争、中国かゆのサービスくらいだったと聞く▲始まりは質素だが、長崎市、中心商店街と手を取り合って今につながる。近年は、中華街に近い出島にも、夜景が見られる稲佐山にも足を運ぶ人が増えていたが、例に漏れず、コロナ禍がこたえた▲今回は過去最多の136万の人出を目指すという。ランタンの光がほかの観光資源も仄かに照らし、観光都市の未来を仄かに照らす。そんな復活の祭典になることを。(徹)

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