アフリカ豚熱の侵入阻止へ 農水省と長崎県が水際対策のキャンペーン実施 対馬・比田勝港

高速船の利用客にティッシュを配布する農林水産省職員ら=対馬市、比田勝港国際ターミナル

 家畜に甚大な被害を及ぼすアフリカ豚熱(ASF)の感染が韓国で拡大し、日本への侵入リスクが高まっていることを受け、農林水産省と県対馬振興局は8日、韓国・釜山港との国際定期航路が就航する長崎県対馬市上対馬町の比田勝港国際ターミナルで、防疫に向けた広報キャンペーンをした。
 ASFは、ブタやイノシシに感染して発熱などを引き起こす病気。致死率は極めて高く、有効なワクチンや治療法がない。日本での発生は未確認。韓国では2019年以降に感染が拡大し、釜山では今年1月、日本行きの旅客船ターミナル近くで野生イノシシの感染が確認された。同省は今月2日、都道府県に水際での対策強化を呼びかけた。
 キャンペーンは、訪日客の増加が見込まれる韓国の旧正月(10日)前後の連休を前に実施。8日午前、比田勝港に入った高速船の利用客に、感染経路になり得る肉製品の持ち込み禁止を呼びかけるティッシュを配布したり、検疫探知犬で荷物を検査したりした。
 この日は、肉が具材に使われた「キンパ」(韓国風のり巻き)を持っていた利用客に廃棄してもらう事例があったという。同省動物検疫所門司支所博多出張所の田上勝則所長は「一度アフリカ豚熱が国内に入れば畜産業に壊滅的な打撃を与え、(対馬にも多い)野生イノシシに感染すればコントロールは難しくなる」と強調。「今まで以上に船会社などにも連携・協力をお願いして防いでいきたい」と話した。

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