社説:共産党の新体制 開かれた組織へ変革を

 100年を超える党の歴史で、初めて女性がトップに立った。政権と対峙(たいじ)する野党として存在感を高め、低迷が続く党勢を回復させられるかが問われる。

 共産党が先月の党大会で新体制を発足させ、委員長は23年務めた志位和夫氏から田村智子氏に交代した。安倍晋三元首相の「桜を見る会」の追及で知名度を上げた田村氏を党の顔とし、政策委員長に京都出身で39歳の山添拓氏を起用することで、世代交代による党の立て直しを図る狙いとみられる。

 志位氏は2000年に46歳で委員長に就いた。04年には党の理念や政策路線を定める綱領を改定し、天皇制や自衛隊を当面容認するとした。安倍政権が制定した安保法の廃止を掲げて野党共闘にもかじを切り、国政選挙では京都、滋賀の一部選挙区で擁立を見送った。

 こうした「現実路線」で支持拡大を目指したが、党勢の退潮に歯止めがかかっていない。

 1990年に約50万人いた党員は半減し、機関紙「しんぶん赤旗」の購読者数も減っている。昨年4月の統一地方選でも京都府議選、滋賀県議選、京都市議選で議席を減らし、市議会では長年守った第2会派の座から転落した。今回の京都市長選でも「支援」とした候補が新人対決で競り負けた。

 他党では国政選挙の敗戦で党首が責任を問われ辞任する一方、志位氏の在任は歴代でも最長に及んだ。党運営に閉そく感を生んだ面も否めない。

 異論を排除するような体質にも批判の目が向けられている。党首公選制を著書で訴えた京都のベテラン党員2人を除名した問題では、先の党大会で地方議員から疑義の声が出たものの、田村氏が「誠実さを欠く発言」と叱責(しっせき)した。党内からも人格否定やパワハラとの指摘が上がっている。

 開かれた場で議論し、多様な意見に聞く耳を持つ政党へと変革できなければ、新たな支持層を獲得するのは難しいのではないか。

 新体制では、長く党の理論的支柱だった前議長の不破哲三氏が、運営に決定権を持つ中央委員を退いた。委員長より上位で、18年間空位だった議長に就いた志位氏が「院政」を敷くようなことがあれば、世代交代も形ばかりと映ろう。

 党員の高齢化も進む中、先月の大津市長選をはじめ党の独自候補擁立が困難な地域も増えている。現場の党員が感じる課題や不満を丁寧にくみとり、党改革に生かす姿勢が求められる。

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