「オーバードーズ」で救急搬送 20代最多、女性が7割超 宇都宮市消防局2022年は105件

済生会宇都宮病院に救急搬送される患者。薬の過剰摂取による搬送は年間100件を超える(同病院提供。写真と本文は関係ありません)

 薬物の過剰摂取(オーバードーズ)が若年層などで広まり社会問題化する中、宇都宮市消防局で2022年、医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送が105件あったことが10日までに、同消防局への取材で分かった。20~40代が多く、搬送者の77%が女性だった。栃木県内全体ではさらに多くの患者の搬送があるとみられる。専門家は背景に、日常のストレスや生きづらさなどがあるとみる。救急搬送や中毒症状の治療後に、精神科など心のケアをする支援機関へとつなぐ連携の必要性を訴える声もある。

 宇都宮市消防局は23年、厚生労働省と総務省消防庁の調査の一環で、医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送件数を調べた。20年は100件、21年は94件、22年は105件で、年間100件前後で推移。23年は6月末までの半年間で55件となり、前年からほぼ横ばいになっている。

 20~23年6月の3年半の年代別では20代が95人で最多。40代82人、30代52人、10代44人と続いた。男女別は7割超を女性が占めた。

 同市内外から救急搬送を受け入れる済生会宇都宮病院県救命救急センターは医薬品の過剰摂取について、薬の代謝が追いつかず、肝不全や腎不全につながる恐れがあるほか、意識を失い、けいれんを起こし、脳にダメージを与える可能性があると説明する。

 同センターでは23年、薬物中毒による救急搬送が118件あった。小倉崇以(おぐらたかゆき)センター長(40)は「若者は仕事や学校などで受けたストレスから、自傷行為として手に入りやすい市販薬を過剰摂取することが多い印象がある」と話す。

 高齢者についても「健康面の不安から大量の処方薬を一気に飲むケースが見受けられる」と言及した。

 薬物依存症からの脱却を支援するNPO法人「栃木ダルク」の栗坪千明(くりつぼちあき)代表理事(55)は、薬に頼る背景に「生きづらさがある」と指摘。「その解消方法として服用を繰り返すうちに耐性がつき、過剰摂取になるのでは」と推測する。

 搬送後の支援の必要性を説く意見もある。小倉センター長は「救命救急医は中毒症状の診療はできるが、心の治療はできない。適切に精神科につなぐ必要がある」と強調し、連携の重要性を訴えた。

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