蔵王山と西吾妻山、60歳以上の遭難相次ぐ 年齢も考え、準備と計画を

 蔵王山と西吾妻山に本県から入った登山客の遭難や救助がこの1週間で3件相次いだ。いずれも当事者は60歳以上。米沢署などは10日、西吾妻山で行方が分からなくなった静岡県の60代男性を捜索したが、見つかっていない。冬山は天候が急変しやすく、霧やホワイトアウトで視界を失う危険性がある。山岳関係者は「下界とは気候が違う。加齢を考慮した準備と計画が必要だ」と警鐘を鳴らす。

 蔵王山では7、8の両日に遭難と救助が計2件あった。徳島県の70代男女と寒河江市の70代男性の計3人が山形市の蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅から地蔵岳に登山し、帰路に視界が悪くなり道に迷った。樹氷見学に来た福岡県の80代女性と長崎県の70代女性は共に低体温症とみられる症状となり、70代女性は意識がなくなった。110番通報の約2時間前の8日正午時点で、同駅付近は風速毎秒8メートル、気温は氷点下6度だった。

 県山岳連盟の井上邦彦理事長(小国町)は「蔵王山や西吾妻山は、装備などの準備が十分でない人でも、ロープウエーなどを使い比較的容易に標高が高い所まで行ける」と、手軽さに潜む危険性を挙げた。「冬山は急に気候が変わる」と強調し、標高100メートルごとに気温は0.5~0.6度下がり、風速1メートルごとに体感温度は1度下がると説明。高齢になると筋肉や血管、脳など各機能が衰え、「加齢を踏まえた計画を立てることが重要だ」と訴えた。

 蔵王温泉観光協会(山形市)によると、国内外から樹氷を見に訪れる観光客は新型コロナウイルス禍前の水準まで戻りつつある。問い合わせには、地蔵山頂駅付近の気温や積雪状況などを伝えている。冬山に適した服装が分からず聞いてくるケースも多く、黒崎広宣事務局長は「山を甘くみないでほしい。命にかかわるので、万全の準備で来てほしい」と話す。

 井上理事長は、海外からの観光客やスキーヤーなどについて「こちらの想定を超えた行動を取ることがある。言葉の壁もあり対策は急務だ」と指摘。県警地域課は、登山に慣れた人も油断は禁物だとし「決して無理せず、ルートや現場状況を確認して、柔軟に判断してほしい」としている。

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