避難生活、顕在化する性別役割 不利な扱いないように 女性加わり平時から備えを ジェンダー・防災の視点から㊤

2019年の台風19号による災害発生時に開設された避難所=宇都宮市内

 能登半島地震の発生から1カ月が経過したが、多くの人が今も避難生活を余儀なくされている。さまざまな制約が生じる避難生活は、必需品の不足はもとより固定的な性別役割分担による負担増など性差に基づく課題が顕在化しやすい。課題解決策を探りながら、防災の視点で男女共同参画について考える。

 内閣府男女共同参画局が2020年5月にまとめた「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」には、「災害から受ける影響やニーズは男性と女性で異なる」として性差への対応の必要性が明記されている。

 避難所では、授乳室の設置や生理用品の用意といった女性特有のニーズへの対応や性暴力の抑止などが求められる。とちぎ男女共同参画財団の担当者は、こうしたきめ細かい支援には「避難所運営への女性の参加や男女共同参画の視点が不可欠」と指摘する。

 災害時は「男は仕事、女は家庭」という固定的な性別役割分担意識が強化されることにも注意が必要だ。女性には炊き出しや介護・育児などの無償労働が集中し、男性はがれき処理や復旧活動で過労や孤立に追い込まれる可能性がある。

 同財団は行政担当者や地域リーダーに向けた防災ハンドブックで「男性も女性も性別によって不利な扱いを受けることがないよう配慮が必要」と強調する。ハンドブック作成に携わった同財団の芳村佳子(よしむらよしこ)係長は「避難所の運営には女性や高齢者、障害者らの多様な視点、ニーズの把握が必要だ」とした上で、「まずは普段からジェンダー平等を進め、地域活動に女性がリーダーとして入っておくことが大切だ」と訴える。

 地域防災への女性参画は、全国的に道半ば。都道府県防災会議委員に占める女性の割合は22年4月時点で19.2%で、本県でも21.4%にとどまっている。

ボックスタイプのテントでプライベートな空間をつくった「女性更衣室」。避難所での更衣スペース確保は、性差に基づく課題の一つだ(とちぎ男女共同参画財団提供)

© 株式会社下野新聞社