イベント次々「地域あっての寺」 京都・宇治田原の住職、観光ツアーも企画

「気軽に寄ってもらえるようなお寺にしたい」と話す田中さん(宇治田原町郷之口)

 京都府宇治田原町郷之口にある妙楽寺の住職を務める田中大典さん(45)は「まちに貢献したい」との思いから、寺を拠点に10年以上にわたって地域との交流を進めてきた。

 町内にある別の寺に生まれた。佛教大卒業後、工場勤務や販売員などを経て、2010年ごろに後継ぎのいなかった妙楽寺の副住職に、その後住職となった。

 「仏教の難しいお話をしてもなかなか興味を持ってもらえない」と苦笑し、「檀家(だんか)あっての寺なのは間違いないが、地域あっての寺」と話す。考えの背景にあるのは檀家の減少だ。「多いところや観光寺院は別だが、うちのような小さなお寺は地域への違うアプローチがあってもいいのでは」と語る。

 その取り組みのひとつが、月に1回、寺の本堂で開かれる地元住民の交流を目的としたカフェだ。主催する町社会福祉協議会に場を提供しており、自身も高齢者との会話を楽しむ。落語やギターのライブも毎年企画し、参加者からは「お堂で聞けるのは新鮮」と好評だ。

 昨年10月には、町のふるさと納税の返礼品として、趣味の自転車を使って町内を案内するツアーを始めた。徳川家康が本能寺の変の際に堺から三河へと逃れた際に通ったとされる「伊賀越え」のルートや町の茶畑の絶景スポットなどを巡る。寺での写経体験も用意。町内の店で使える商品券も付けており、「せっかく町に来てもらえるのだから、地域のお店が恩恵を受けることにつながれば」と話す。

 町に住んで45年になる。「なんやかんや好きなまち。役に立ちたいと思う」。寺をインフラのような存在にしたいといい、「お寺が社会に必要な場所だとちょっとだけでも思ってもらえたらうれしい」と笑顔を見せた。同町郷之口。

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