虐待や育児放棄は「子どもの人生奪う」 大津市で専門家がトラウマ回復支援訴え

長年の臨床心理士としての経験から、虐待を受けた子どもに必要な支援を説く西澤さん(大津市梅林1丁目・滋賀弁護士会館)

 虐待を受けた子どものトラウマ(心的外傷)に詳しい山梨県立大の西澤哲特任教授が27日、大津市で講演した。虐待やネグレクト(育児放棄)は子どもの心に深い傷を残し「人生を奪ってしまう」ことから、時には親から引き離し、トラウマからの回復を支援する必要があると訴えた。

 講演会は、県内で児童虐待防止に取り組む市民グループ「CFRびわこ」が主催した。

 養護施設などで虐待を受けた子どもと関わってきた西澤さんは、児童虐待は親による「子どもの乱用」だと指摘。親が自らの欲求を満たすために子どもを利用することで引き起こされるため、親への理解と合わせ、「子どもが親から距離を取る力を付けることも重要だ」と話した。

 暴力や性的虐待に加え、親からの「見捨てられ体験」となるネグレクトが子どもにもたらす影響も深刻だとし、心理療法などでトラウマを整理して治療することや、信頼できる大人と愛着を育むことが大切だと説いた。

 日本では児童相談所が関与しながら、虐待で命を落とす子どもが後を絶たない。西澤さんは、米国では虐待が軽い段階で子どもを家庭から分離するとし「虐待と分かっているのなら見守ってはいけない。さまざまな理由で保護できないとしても、家族の病理へのアセスメントが必要」と述べ、児相の機能向上を課題に挙げた。

 講演に先立って主催者は、県内市町の児童虐待相談対応件数を報告。児童100人当たりで換算すると全国的に高い水準にある一方、虐待相談を担当する市町職員の約半数は非正規で、専門的な経験を積みにくい状況にあると問題提起した。

© 株式会社京都新聞社