金もうけのために酷使されたシェットランド・シープドッグの繁殖犬 保護されても瞳は悲しげだった 「毎日が愛される日々にしてあげたい」

繁殖小屋からボロボロの状態で保護されたふわちゃん

熊本県の山中で、高齢男性が個人運営していたワンコの繁殖小屋がありました。複数の繁殖犬が檻の中で暮らし、産まされた子犬はすぐに取り上げられ、母犬は何のお世話もされずボロボロになり、無数のノミが体を覆っても放置されていました。目を覆いたくなるほど劣悪な状況でした。

メスのワンコ・ふわちゃんはそういった繁殖犬の1匹でシェットランド・シープドッグ。必死に生きるこの命は、この繁殖小屋ではお金を生む道具として扱われていました。

地元ボランティアの尽力で繁殖業者を説得

繁殖小屋の内部の様子

憤りを通り越し涙が出てくるほどですが、この繁殖業者に介入し繁殖犬たちの命を救い続ける地元の保護ボランティアがいます。このボランティアは、他の活動家や保護団体にも声をかけ協力要請を依頼。この声を受けて立ち上がった一つのチームが福岡県を拠点に活動をするわんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)でした。

結果的に、熊本、福岡、長崎、東京の各地のボランティア団体が協力し合い、現場のワンコたちを保護。およそ100匹を超えていた現場は、なんとか約60匹ほどに減りました。ただし、現場にはまだボランティアが介入できていない建物があり、この中にはさらに多くのワンコがいるのではないか……とも見られ、「正確な数字はわからない」ともはぴねすのスタッフは言います。

しかし、こういった動きに対し、現場で働くたった一人の70歳の男性従業員も後にこれに応じてくれるようになり「向こう2年後までには完全に廃業する」「現地の犬をゼロにするために協力する」と言ってくれました。

「ここまで生きてこられたのは奇跡」と獣医師

保護当初のふわちゃん

この現場からはぴねすが保護した複数のワンコのうち、一番皮膚の状態が悪いのがふわちゃんでした。皮膚病に侵されたまま放置され、被毛の一部が禿げ上がっています。はぴねすのスタッフは、その様子に胸を痛め、「再び毛が生えて、ふわふわになりますように」ということからこの名前をつけてあげました。

ふわちゃんを引き取ったはぴねすのスタッフはまず週に2回のシャンプーと、栄養のあるエサ、献身的な世話を続けました。ボロボロで伏し目がちだったふわちゃんはやがてスタッフに目を合わせてくれるようになりました。その目は小さく笑っているようで、体も少しずつきれいになっていきました。

自壊寸前だった大きな乳腺腫瘍、目のイボ、肩の腫瘍、歯の病気など持病のほとんどを処置し、避妊手術を行うことができました。手術を行なった獣医師によれば、ふわちゃんは生まれながらにして心臓の奇形もあり、先天性の疾患がありながらもここまで生きてこられたのは奇跡だと言います。

時折見せる寂しそうな目に胸が締め付けられる

ふわちゃんははぴねすのスタッフの家で過ごすことになりました。穏やかな性格のお利口さんで、スタッフがエサの準備をしていると、「くれるの?」と見上げ、エサを食べ終わるとテクテク歩いてトイレに向かいます。そして、自分のベッドに戻って静かに寝ます。

おそらくは保護される前まではずっと檻の中で暮らしていたフワンちゃんを思い、スタッフはあえて部屋を自由に動けるようにしていますが、そのため自分のベッド以外の場所でもよく眠るそうです。

ふわちゃんははぴねすスタッフの家で自由に過ごせるようになりました

どの場所でもよく眠るということは、ふわちゃんがスタッフとその家に対して「ここは怖い思いをさせられる場所じゃないんだ」と信頼を寄せているからのようにも映ります。一方、ふわちゃんが時折浮かべる寂しそうな瞳をみると、胸が締め付けられるような苦しい気持ちになるともスタッフは言います。

最期まで愛されて生きる日々にしてあげたい

同じ犬として生まれたのに、人間の商売道具として使われるだけの「命」と、最初から家族として愛された「命」。当たり前ですが全く違うものです。

前者のようなワンコが人間から強いられてきた過酷な時間を巻き戻すことはできません。しかし、はぴねすのスタッフは「だからこそ、こういったワンコたちのお世話をし続けたい」とも言います。

「ふわちゃんたちが生まれてきた『意味』を、人間の金儲けのためだけで終わらせるなんて絶対にイヤです。ふわちゃんが元気に走り回ることはもうできないのかもしれない。はしゃいで遊んだり、人間や他の犬とじゃれあったりすることもできないのかもしれない。でも、人間の勝手で使われてきたふわちゃんたちの『これから』は、最期まで愛されて生きる日々にしてあげたいと思うんです」

ふわちゃんにたっぷりの愛情を注ぎ、世話をし続ける一方、幸せな第二の犬生へ導いてくれる里親希望者さんを募集しました。はぴねすのスタッフが願う「ふわちゃんが愛されて生きる日々」が1日も早く訪れることを願ってやみません。

__わんにゃんレスキューはぴねす
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(まいどなニュース特約・松田 義人)

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