今月限り、惜しむ声多く 上山・新丁温泉共同浴場「鶴の湯」

「残り2週間、最後まで頑張る」と語る浦山文一さん=上山市・新丁温泉共同浴場「鶴の湯」

 地元住民などに親しまれてきた上山市の新丁温泉共同浴場「鶴の湯」が、今月末で閉館する。常連客などの高齢化や新型コロナウイルス禍による利用者減、経費増などで存続が難しくなった。惜しむ声が多く寄せられており、運営する新丁温泉の代表・浦山文一さん(78)=同市新丁=は「寂しいし残念だが、やり切る」と話し、感謝を込めて最後まで客を迎え続ける。

 浦山さんによると、鶴の湯は明治―大正期に野菜の洗い場などに使っていた場所の近くに小屋を建て、足湯のようにしたのが始まりという。昭和に入り現在地に移り、同30年代に1階に浴場、2階に大広間を備えた今の建物になった。

 浦山さんは「子どもも大人もたくさん来て、にぎわっていた記憶がある」と懐かしむ。だが住環境の変化とともに利用者は減少し、2018年ごろは一日30~40人程度になった。「上山温泉が発展したのは共同浴場があったから。絶対に守らなければいけない」と決意し、19年6月からは1人でやりくりしてきた。

 インターネットを使い情報発信したり、テレビ放映されたりして、県内外から観光客などが訪れ、入浴客は一時一日60~90人に回復した。しかし地域住民の高齢化やコロナ禍で地元の利用者数は十分には戻らず、昨年11月に閉館を決めた。閉館後は、市内の共同浴場は4館となる。

 今月初めに営業終了を告げる紙を張ると、連日多くのファンが駆け付けている。浦山さんは「『これからどこのお湯に行けばいいんだ』と言われると、申し訳ない気持ちでいっぱい」とし、「大変だったが生きがいでもあった」とも話す。建物は地区公民館としての活用が検討されており「これからも憩いの場になればうれしい」と語る。

 営業時間は午前6時~午後9時半。入湯料150円。21日のみ休み、最終日は無料開放する。

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