「200円ぐらいだったら抵抗ない」熱海市が導入目指す「宿泊税」観光客や旅館業者の本音は?【現場から、】

静岡県熱海市は、市内の宿泊施設を利用した人から200円を徴収する「宿泊税」の導入を目指しています。全国的にも導入を目指す自治体が増えているという宿泊税ですが、熱海市への観光客や旅館業者はどう思っているのか。本音を聞きました。

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2月12日、熱海市で開かれた海上花火大会。2月にもかかわらず、4000人を超える観客が冬の花火を楽しみました。

<観光客>
「きれいでした。寒い中見る価値あります」

年間10回以上行われる恒例の花火大会は、市の観光業者にとって集客が見込めるイベントで、開催日は宿泊客が5000人増えるという試算もあります。一見、好調に見える観光地・熱海ですが、いま、宿泊税の導入を目指しています。

<審議会の答申>(1月22日)
「本案について承認をいただきました」

熱海市は、学識経験者や宿泊業者などで構成する行財政審議会から宿泊税の導入を認める答申を受けました。

熱海市が導入を目指す宿泊税は、市内の宿泊施設を利用した12歳以上の観光客を対象に、1人あたり1泊200円を徴収するものです。国内では、東京都や京都市などの自治体が導入していますが、静岡県内で採用されれば、初めての事例です。

<熱海市観光建設部 立見修司次長>
「熱海市は人口減少、中でも高齢化率が高まっているという中で、今後、税収の減少であったり、社会保障関係、経費の増大というものが目に見えている。その中で安定して観光に使う財源を確保する上で必要性があった」

熱海市の税収は、人口減少や高齢化の影響で、1996年の139億円をピークに年々減少傾向にあり、2020年は93億円とピーク時に比べると30%以上落ち込んでいるのが現状です。

一方で、熱海市の基幹産業である観光業では、客を呼び込むためのPRなど、年間約5億円の財源を必要としていて、それを宿泊税で担おうとしています。

宿泊税の導入は、2025年4月を予定。年間350万人の宿泊客に対して、約7億円を見込んでいます。

宿泊税の導入について観光客は…。

<観光客>
「抵抗はないね。そんなに。200円ぐらいだったらまあそんなに」
「存続していくために必要なんだったら高いとも思わないし、安いとも思わないし、それぐらいの値段で妥当な値段を出したんでしょうから。悪いとは思わないですね」

自らもホテルを運営する旅館組合の理事長は、最初は宿泊税の導入に対して客が減る事などを心配していたということですが…。

<熱海市ホテル旅館協同組合連合会 森田金清理事長>
「これから少子高齢化、こういったことを考えますと、財源もだんだん先細りしていくと。宿泊税収入でやはりしっかりと観光に特化できた財源を確保できるということは、これは我々にとって、今後、熱海市の持続可能な観光地として必要だと認識している」

年間7億円を見込んでいる宿泊税。PR以外には、こんな使い道を考えているようです。

<熱海市観光建設部 立見修司次長>
「花火大会のグレードアップであるとか、あるいは通年楽しんでいただけるようなアクティビティの開発であるとか、宿泊客を増加させる施策、観光消費額を高める施策に対して税金を活用させていただく」

<水野涼子アナウンサー>
年間7億円が見込まれる宿泊税は、誰が、どのように運用していくのでしょうか。

<神谷修二記者>
熱海市は「DMO」という組織を新たに立ち上げ、この重要な役割を託そうとしています。

<水野涼子アナウンサー>
観光協会とは、どう違うのでしょうか。

<神谷修二記者>
DMOは、マーケティングに詳しい専門家を公募し、観光地が稼げる仕組みを考え、熱海市や観光協会、旅館業組合などに作戦を提案します。このDMOがうまく機能するために重要なこととして、熱海版DMOの設立に携わる県立大学・大久保教授は「新しい事業に気持ちよく取り組むために、まず、DMOを地域の人に応援してもらえる組織にすることが重要」と話します。宿泊税で、どれだけ観光客の満足度を上げられるか。DMOの手腕が問われることになりそうです。

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