「最後まで仕上がりが分からないところがおもしろい」駿河和染 草木ろうけつ染め【しずおか産】

伝統と現代のデザインが融合した「駿河和染」。今回のしずおか産は、優しくて温かみのある風合いが魅力の「草木染ろうけつ」を紹介します。

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静岡市葵区の駿府城公園の近くに店を構える「紺友染色工房」。江戸時代末期から続く老舗の染め物店です。徳川慶喜公からも注文を受けた歴史があります。

染色家、5代目の鈴木緑さんです。特徴的な技法は「草木染ろうけつ」。熱して、柔らかくなったロウを筆で置き、自由に絵柄を書いていきます。溶かしたロウが固まらないうちに作業します。

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「簡単にいうと、クレヨンで絵を描いて、絵の具を塗ると、水を弾くような感覚で、ろうがついた所が染まらなくなる。染めたくない所にろうで書いて」

ロウを置いた所がマスキングされるため、染まらなくなります。そして、ヤマモモの樹皮を煮出して作った植物の染料で、染めていきます。

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「ロウの厚さなどにもよって、『防染』具合が変わってくるので、そういう想像をしながらやっていくのがおもしろい」

最後に、ロウをお湯で洗い落として、乾かしたら完成です。糊ではなく、ロウを使うことでかすれ、割れなど、「ろうけつ染め」ならではの風合いが生まれます。

緑さんの祖父の福富さんが京都で学び、店に取り入れました。クッションにテーブルランナーなど、伝統を継承し、現代の暮らしに合うものづくりを目指しています。さらに、イタリア・ミラノのデザイナーとコラボしたショルダーバッグにも挑戦。石畳をイメージして染めあげました。

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「生活の彩りとして、気に入ったら手元に置きたいと言ってもらえるとうれしい」

アナウンサーも「ろうけつ染め」を体験させて頂きました。描くのは、富士山です。

<井手春希キャスター>
「このかすれどうですか?」

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「いいと思います。思い切りよくて。いい形、静岡の富士山っぽくなってきました。最後に洗って乾くまで(仕上がりが)分からないところがおもしろい」

緑さんは子どもたちの夢のお手伝いもしています。静岡市の小学5年生、高橋大輔くんは、地元の信用金庫などが主催する「しずおか夢デザインコンテスト」に応募し静岡市長賞を受賞。大輔くんがデザインした「ゆう大な富士山と富士五湖」は、緑さんなどの職人たちの手によって形になりました。

表彰式当日。緑さんは、最終的に仕上げた作品を大輔君に手渡しました。

<高橋大輔くん>
「おー、全部白じゃない感じがめっちゃいい」

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「上手にできたね」

<高橋大輔くん>
「ろうの所など、うまく表現できてよかった。(和染を)やらなかったら、知る機会も少ないから、もっといろんな所で知られるとよい」

<紺友染色工房 鈴木緑さん>
「とにかく、熱意がすごくて、うれしかった。子どもたちも、身近にはならないかもしれないが、染め物を経験してもらいたい」

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